「…ん……ぁ…」
ぼんやりと身体に重さを感じながら目を開ける。けれど、眼鏡を掛けていないからぼやけた視界に眉間に皺を寄せて、お腹に感じる重みを触って確かめる。
私に乗っているのは、しとりだ。
どうして私は眠っているのかと目を閉じて考える。最後の記憶は緋村剣心が現れて、武田観柳が逆刃刀で殴り倒されていたところだった気がする。
「起きたか、景」
「左之助さん?」
しとりを起こさないように頭を動かして左之助さんを探すものの。眼鏡を掛けていないから、彼の姿を見つけることは難しく手探りで眼鏡を探す。
「眼鏡ならオレが持ってる」
「ありがとうございます」
ぼやけていた視界のピントが綺麗に重なり、これで見えるとお腹の上に乗っているしとりを見る。彼女の目元は赤く腫れ、グズグズと鼻を啜り、泣き疲れて眠っている彼女の状態に気付いた。
「どうして、しとりが泣いているの?」
「覚えてねえのか?」
「……ああ、そうだ、私は斬られて…」
「傷は剣心の核鉄も借りて塞がっちゃいるが、もう三日も寝込んでるんだ。しとりだって不安でずっと泣いてたんだ。頼むから無茶しないでくれ」
その言葉の重さに申し訳無さと、生きているという現実に漸く溜め込んでいた恐怖と不安が溢れ、私の胸の中で泣き疲れて眠る彼女の事を抱き締め、起こさないように私も涙を流す。
「ごめんね、ごめんね、お母さんのせいで泣かせてごめんねッ」
「剣心と話して決めた。お前としとりは小樽を出て、函館に戻って嬢ちゃん達と一緒にいろ。心配だから連れてきてたが、下手に連れ回した挙げ句、お前に怪我を負わせるなんざ最低の事だ。ごめん」
「……いいえ。左之助さんのせいじゃありません。私が怖いから離れたいと言わなかったからこうなってしまったんです。ごめんなさい」
私達はお互いに謝り続けていたけれど。
小さくくしゃみをするしとりの鼻を啜る音でこのままだとしとりが風邪になるからと私の布団の中に移して貰い、ポカポカした子供の体温に安心してしまう。ちゃんと生きて、またこの子を抱き締められる。
「左之助さん、しとりの反対側に」
「そんなことしたら布団が狭くなるし、景は怪我人だろ?オレは寝ずに二人を見てるから安心してくれ。剣心も函館の嬢ちゃんに手紙を送ってる、向こうに着いたら医者のところに行こう」
「でも、いえ、分かりました」
核鉄の治癒能力を引き出す副次効果を受けているときは、やっぱり身体の不調は静まり、呼吸の違和感も無くなっている。───けれど。私の身体を五年間も支えてくれた「XX」の核鉄の様な熱さはない。