小樽を出立するとき、やはり武田観柳の勧誘を受けたけれど。今回の剣客兵器や妖怪、ひょっとしたら一件はまだまだ続くため、私を連れていくのは危険だと。
そう告げれば「確かに、そうですね。いずれ雅桐倫具の名が聞こえる頃に、また」と武田観柳は真剣な眼差しで笑い、しっかりとお別れした。
五年前のときは恐ろしく感じた人が友人になり、違法や脱法ではなく合法のままに日本政界に乗り込み、日本中に雅桐倫具の名前を轟かせるという話を聞いたときは困惑したけど。
あの人ならやりそうなんですよね。
「馬車を引くのは半年振りか?」
「もうそんなに経ったんですねぇ」
行者席に腰掛ける左之助さんに寄り添い、背中の痛みと傷も癒えてきた身体を預ける。しとりは私が無茶するんじゃないかと起きてから寝るまで、ぴったりとくっついている。可愛いけど、悲しませてしまったことに私はどうしようもない後悔と負い目を感じてしまう。
しかし、長谷川君の刀は今回も抜けなかった。
やはり何かしら妖怪変化か存在その物に干渉するという現象が起こっているのだろうか。それとも糸色家の血が、私には欠片も遺伝していなかった霊媒師が関係していたりするのだろうか?
「景、もっと寄らねえと落ちるぞ」
「あっ……フフ、ありがとうございます」
私の肩を抱いて引き寄せてくれた左之助さんの優しさに喜びつつ、馬車の中で騒がしくしている長谷川君と井上君、左之助さんと山小屋にいた久保田さんの拾った猛者人別帳は今後の役に立つと思う。
少し中を読んだけれど。
私の知っている人はかなり居た。
左之助さんや緋村剣心、斎藤一、永倉新八、鷲塚慶一郎、不破信二、陸奥出海、石動雷十太、明神君、塚山君、他にも沢山の名前があった。
「やっぱり姿お兄様と私の名前もある」
戦闘力なんて皆無の私は猛者なのでしょうか?という疑問も残る中、備考欄に「未来を視る神通力の可能性アリ」という単語に苦笑してしまう。
私の物は「未来の記憶」です。
「しとり、ヨダレが出てるよ?」
「んぷぇ…」
「……寝惚けてるわね」
ぐでんぐでんと身体を揺らして私の膝の上に座っているしとりが睡魔に負けていく。フラフラする身体に不安を抱きつつ、しっかりと襷で落ちたいように固定しているから大丈夫で、それに左之助さんもいる。
「しかし、私の体重と身長は何故知られて?」
「兄貴の仕業じゃねえのか?」
「……有り得ますね。姿お兄様、私の機微や差異に気付くことが多かったですし。おそらく、この天幕に隠されていた核鉄も姿お兄様か、ドクトルが仕込んでいたものでしょうし」
彼らは私に何を期待しているのだろうか。