あれから三日ほど経つけれど。高荷恵を追っていた男達は神谷活心流に乗り込んで来る様なことはなく、彼女の近くに居て周囲を警戒していた神谷さん達も少しだけ緊張感が緩んでいる。
「
「……いえ、私の力なんかじゃ…」
「ご謙遜を。貴女の知恵が有れば私の夢もより早く、より
似非英語を織り混ぜた武田観柳の言葉遣いに戸惑いつつ、私は彼の提案を断り、彼に頼まれていた兵器ではなく、正真正銘の本当に只の家具の図案を彼に渡す。
武田観柳の表向きは青年実業家であり、東京の家具商売関係は四割は彼の支配下に在るため、その信用と信頼の高さは並大抵の努力では成し得ない。
この人は性根の真面目さを残して、悪徳に走らなければ普通のエリート街道を真っ直ぐに走っていける人だ。それなのに、どうしてリスクの大きすぎる阿片の密売をしているのか。
「貴女のお心が変われば何時でも来て下さいね」
「はい。いつもありがとうございます」
そう言って私は武田観柳邸の応接室を出た瞬間、スッとなにもないところから、いきなり目の前に現れた四乃森蒼紫に驚き、その場にへたり込んでしまう。
「御頭さん、いきなり現れるのは失礼でしょう」
「そうですかね。この女は随分と周りに視線を送っていた。それこそ
「ほう、それはそれは?」
私を見下ろす四乃森蒼紫の視線はあの時の私の図案を褒めた時とは違う、これから使える利用価値のある道具を見つけた怪しげな眼だ。
「では、丁重にお連れして下さい。糸色先生はこれから私の大切な
御庭番衆の御頭、緋村剣心に匹敵し得る強さを持つ四乃森蒼紫に捕まって逃げ出すなんて出来るわけがない。おそらくまだ高荷恵の所在は知られていないはずだけど。
「深く息を吸え、多少は落ち着けるだろう」
「は、はい…」
そうっと私の背中を擦って呼吸の安定を手助けしてくれる四乃森蒼紫の言葉に従って、大きく深く息を吸って、ゆっくりと息を吐いて、手すりや壁を掴んで絨毯の敷かれた床から立ち上がる。
「観柳の考えについては知らないが、ヤツもお前に悪さをするつもりはない。しかし、その優れた知恵はいずれ我ら御庭番衆のために尽力して貰うことになる事は覚えておけ」
そう言い残して四乃森蒼紫は歩き出す。───今なら逃げれる!なんて思えるわけもなく、私は黙って前を歩く彼の背中を追う。