「なあ、剣心」
「なんでござるか」
「妻の後ろ姿にグッと来るんだが、分かるか?」
「分かるでござる」
「なあ、剣心」
「なんでござるか」
「子供に微笑む妻って良いよな」
「分かるでござる」
「なあ、剣心」
「なんでござるか」
「妻を抱き締めたくなるんだが、分かるか?」
「分かるでござる」
左之助さんと緋村剣心は縁側に座りながら、ほのぼのと薫さん、しとりに、剣路君と仲良く遊んでいる私達を眺めて何かを呟いている。
しとりに摘んだ花を差し出す剣路君の健気さを微笑ましく思うと同時に余り分からずに笑顔で受け取るしとりの魔性の女な雰囲気を醸し出している。
一体、誰に似たのかしら?
「景さん、やっぱり剣路ってそうなの?」
「まだ三歳ですから、五歳からにしましょう」
そう言ってワクワクする薫さんを嗜めつつ、左之助さんの視線に首を傾げる。いつもなら顔を見ているのに、緋村剣心も何処かを見つめている。
まあ、気を抜く日は必要ですから。
「ん!」
「あら、くれるの?」
「母ちゃんの!」
フンスと胸を張るしとりが渡してくれたのは手のひらに乗るサイズの巨大な金塊だった。なんで、こんなところに金塊があるのだろうか。
私の疑問なんて知らないしとりは中庭の地面にスコップを突き立てた瞬間、今度は更に大きな金塊を掴み上げる。あのちっちゃな手にどれだけの力が?
「あげる!」
「あっ、おもっ、ひぃん…!」
しとりから金塊を受け取った瞬間、動けずに身体にのし掛かる金属の重さに薫さんを見れば剣路君に虫を差し出され、後退りしながら虫を避けている。
「ったく。何やってるんだか」
「す、すみません」
あっさりと持ち上がらなかった金塊を掴んで持ち上げた左之助さんにお礼を言いつつ、しとり「あんまり重いものは渡さないでね?お母さん、潰れちゃうから」と言えば「ん!これ!」と普通の石をくれた。
子供の頃って石やキラキラしたものを集めたくなりますよね。私のお祖父ちゃんの家に行っていたときは、いつも川辺で綺麗な石を集めていました。
生まれ変わる前の話ですけど。
今は川辺に行ったら溺れちゃいま……いや、カナヅチなのは前世からですね。そう簡単に人間は出来なかった事を出来るようにはなりませんから。
「左之助さん、要りますか?」
「オレはもう貰ってる」
「綺麗な黒曜石ですね」
真っ黒で艶の見える黒曜石を見せてくれた左之助さんは「黒曜石って小刀になるよな」と呟く。魔除けのお守りにも使えるから、しとりにプレゼントするのも良いかもしれませんね。