まさかの二人目ですよ。
しかし、幸せなことが続いてしまって良いのでしょうか?と思いながらも左之助さんに暖かい格好をするように言われ、何枚も半纏を着せられる。
しとりもワクワクした様な表情で「しとり、おねえちゃんーーー!!」と部屋の中を駆け回り、悠久山和尚に飛び付いたり、本条さんに飛び付いたり、沢下条さんに飛び付いたりしながら大はしゃぎしている。
「こんまいのに、大変やな」
「オウ。オレの女房だからな」
「褒めとらんはダボ」
「ダボー!」
「しとり、真似しちゃダメですよぉ?」
沢下条さんの言葉遣いを真似するしとりの頬っぺたを触り、女の子がしちゃいけない言葉を注意する。左之助さんも「ウチの子の教育に悪いだろうが!」と沢下条さんの頭を掴んで叩いている。
「小娘、養分持ってきたじゃでな」
「……オレが、いる!?」
「誰が貴様じゃ蹴るぞ」
「ああ、左之助さん。此方、五年前もお世話になったドクトルの知り合いです。私は名前も知りませんので、浮気じゃないです」
「浮気は心配してねえが、そっくりだな」
そう言って左之助さんを始めとしたみんなは彼の事を真剣に観察していたそのとき、ウザそうに顔を歪めた彼は全員にデコピンを繰り出し、みんなは一斉に吹っ飛んでしまった。
ここ、借家なんですけど。
「吾に近寄る。…あと小娘には名前を教えとるじゃろうで、アレが名前で忌まわしい思うとるんは吾もじゃが面倒臭いんじゃでは」
「しとりもばーん!」
真っ黒な顔に変わった彼は足元にいるしとりを見下ろすように腰を折り曲げ、彼女の事を覗き込むように見つめ、ベチッと吹っ飛ばないデコピンをした。
「むーー!!」
「吾は餓鬼の相手は嫌じゃ」
「ウチの娘に何しやがる!!」
「何もしとらんわい」
「そもそも名を名乗れ!」
その言葉に彼は動きを止める。
「奈落、今はそう名乗っとるでな」
不服そうに、不満そうに、不快そうに、そう言って奈落と名乗った彼を見つめる。まあ、そうなる気持ちは分かります。戦国屈指の拗らせメンヘラ病みストーカー妖怪こと奈落の分身に転生したら。
誰だってそうなります。
「ちなみに戦国時代の大妖怪です」
「ワイは妖怪は信じへん!和尚、祓って!」
「信じているのでは無いか?それは」
「張の意外な一面ね」
後ろの方で弾き飛ばされた三人も戻ってくるなり、悠久山和尚以外のふたりはわざと煽るように奈落を睨み付け、いつでも攻撃できるようにしている。
「無駄じゃぞ。吾を殺したければ巫女の放つ破魔の矢か其処の大鉾を使わんと殺せん」
此方も此方ですごい煽りますね。