某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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極蝶の友、大妖怪 急

奈落の言葉を信用すると私のお腹に宿っている子は大して私に効果の無かった神酒の栄養を一身に受けているため、霊媒師を裏家業とする糸色家にとって神子の様な存在と言えるそうだけど。

 

「霊媒師なのは聞いてねえんだが」

 

「え、聞かれてませんし」

 

私の言葉にそれはそうだと納得する本条さん達に不満げに視線を向けて、また私を見下ろす左之助さんの考えは分かっている。

 

いつものように「あとで話がある」と言えないから困っているのだ。ふっふっふっ、残念でしたね。いつもなら連れていけるけど、赤ちゃんがいるんです!

 

「ムフゥ……」

 

「むふー!」

 

「ぐっ、お前らなあ…」

 

フンスと座ったまま胸を張る私の真似を、私の膝の上に座って真似をするしとりに左之助さんは「本当に可愛いよな、お前ら」と言いながら私としとりの頭を撫でてくれる。年下として扱って貰えるのは嬉しい。

 

でも、私も母(しとりとこの子)ですよ?

 

「しかし、奈落か」

 

「なんや和尚、知っとるんか?」

 

「顔が見えなかったけど。声は色男よね」

 

「───以前、私の居た寺の古書に記述された戦国の世を混沌たらしめたという大妖怪の名も奈落だったと覚えている。が、あの者が纏う気配は邪気や妖気ではなく、むしろ澄んだものだった」

 

「急に妖気とか言い出したで、この和尚」

 

「でも私達も妖怪見たことあるじゃない」

 

「せやかてなあ」

 

本条さん達の会話を聞きつつ、じりじりと迫り来る左之助さんにしとりを差し出せばしとりも一緒になって、じりじりと私に近付いてきて、ギュウゥーーッ!と二人とも優しく傷付けないように抱き締めてくれた。

 

「フフ、暖かいです」

 

「しとりもあったか!」

 

「オレもあったかいぜ」

 

二人の暖かさと優しさに包まれながら畳に寝転がる私達を羨ましそうに見つめる本条さんと目が合う。なんだか今にも突撃してきそうな雰囲気だけど。

 

今回はダメですよ!

 

「……私も混ざったら」

 

「怒られるで?」

 

「家族の営みだ。鎌足は張に抱きついておけ」

 

「「えぇ、やだあ」」

 

三人のやり取りに気付いた左之助さんは私を抱き上げ、膝に乗せ、私もしとりを膝に乗せて、大鎖鎌を構える本条さんと二本の刀を抜く沢下条さんを見つめる。

 

それにしても私のお腹に取り憑いていた妖怪って、結局なんだったのだろうかと考えながらしとりの頬っぺたを触る。彼は「犬夜叉」の物語に生まれ、「戦国の三日月」にいた蛮竜の使い手とも親しかったとドクトル・バタフライに聞いているけど。

 

やっぱり気になってしまう。

 

 

 




【概要用語解説】

本作の単語や転生者に関する事を解説します。

【奈落】

本名「なし」。
年齢は不明(推定数百年)。身長不明(変身可能)。
「犬夜叉」に登場する半妖「奈落」が、かつて身体を作り替えるときに使用した百匹を越える妖怪の骸が混ざり合い、この世に生誕した転生者。奈落の分身でありながら、唯一『心臓』を持っている。

「ドクトル・バタフライ」と「ヴィクター・パワード」と交流し、二人を純粋な人間として扱っているが本人は一歩引いて彼らと接している。鏡の欠片と羽根の髪飾りを身につけ、鬼の爪の帯留め、刀身の無い刀の柄、家族の遺品を持ち歩いている。


転生する際に選んだ「特典」は「強い妖怪になりたい」と「家族が欲しい」。


一つ目の特典「強い妖怪になりたい」の影響で強い妖怪の骸が混ざり、奈落に匹敵し得る化け物に生まれ変わる。しかし、神々の基準した『強い』は彼の想定した強さを遥かに上回り、気が付けば誰も傍にはいなかった。

二つ目の特典「家族が欲しい」は生前は天涯孤独だった寂しさを埋めるために選んだが、奈落の手によって家族と思った者は消滅し、最後は「親」たる奈落さえも消えていき、彼に家族は一人も残らなかった。


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