斎藤一と永倉新八、鷲塚慶一郎、三島君、そして阿部十郎という豪華な護衛に守られながら私は札幌の警察署にやって来ている。
表向きの理由は迷子の手続きだけど。
実際はドクトル・バタフライ、あるいは近しい人物による誘拐と考えるべき案件だ。ただ、斎藤一の持つ核鉄と私の核鉄を交換する絶好のタイミングだろう。
彼の目的も核鉄の交換かも知れない。でも任務でピリピリしているのに、そんなことを頼んだら本気で怒るかもと考えると身が竦み、しとりを抱き締める力が更に強くなってしまう。
「糸色、敵の目的をどう考える」
「……要人暗殺と交渉の布石かと。被害者は斬奸状という名目で斬られていますけど、狙われているのは北海道から政界に繋がる人達、此方の人が減れば東京の政界は否が応でも此方に来なければいけません」
「一つ目は俺も考えたが、交渉の布石か。北海道は今まさに世界に繋がるために必要な楔、要人が減れば空席に座るヤツが現れる」
私の言葉に思案する斎藤一。
その斎藤一の近くでシャリシャリと林檎を食べながらも同じように思案する阿部十郎にしとりが「おひげ、かわいい」と私の肩口越しに呟く。
お髭が可愛いのは分かります。蒙古にいるとき、少しお髭の生えた左之助さんはワイルドで、その新しい一面を知ったトキメキを感じていました。
「しとりのお嬢ちゃん、おじさんの髭は?」
「じょりじょり!」
「永倉殿、お止めなさい」
「永倉先生、無理に対抗しなくても……」
楽しそうに笑うしとりの声を聞きつつ、ドクトル・バタフライも政界に紛れ込まれると面倒だと考えて私を札幌に連れていったのだろうと考えてみる。
ふと左之助さんの事で頭がいっぱいになる。
きっと、すごく怒っている。下手したら二度と外に出られないように足枷を着けたりするかもしれない。まあ、そんなことあり得ないでしょうけど。
「相楽、此方からも質問だ」
「は、はい、えと阿部さん?」
「剣客兵器の狙いがそれなら最も狙うべき札幌の重役の一人、伊地川を狙わない理由はなんだ?」
「あ、それは自分も気になります」
「「最後に殺すからだよ」」
私と斎藤一が重なる。
「最も重要な役人はその伊地川さんでしょう。でも、いきなり襲ったところで新しい役人を据え置けば問題になりません。だからこそ最初に彼の周りで斬奸状を突きつけ、殺していき、最後は札幌の顔役に成り代わる」
やっぱり同じ答えに行き着いていたと思いながら阿部十郎の質問と問いかけに出来るだけ下手に面倒事を起こさない程度に応えていく。