某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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二年ぶりに更新です。

チマチマ、投稿をします。


斯くして剣客浪漫譚は始まる 序

肌寒さを感じるごろつき長屋の朝早く。

 

私はカチカチと火打ち石を打ち合わせ、木屑の中に火種を移して炭と薪を焚べ、前日に用意しておいた切り分けた大根と乾燥させたワカメを釜に入れ、蓋を閉じる。

 

大根の葉と皮は塩で揉み込み、即席の和え物に用意し、多く作りすぎたお米を釜の熱で温め直す最中、煮えた釜の中に味噌を溶かしていく。

 

火を移した小さな七輪に目刺を並べ、パタパタと団扇で長屋の隣部屋に向けて扇ぎつつ、のそりと外に出てきた左之助さんに軽く手招きする。

 

「左之助さん、朝御飯ですよ」

 

「毎朝、飯集って悪りィな」

 

「良いですよ、これぐらい」

 

私の部屋に入ってきた左之助さんは靴を脱ぎ、居間と寝室を兼ねた狭い部屋の壁際に座り、私の運ぶお膳に乗った大根とワカメのお味噌汁、目刺の塩焼き、大根の葉と皮の和え物、そして玄米にゴクリと唾液を飲む。

 

「いただきます」

 

「はい。いただきます」

 

早朝の静かな朝御飯に舌鼓を打つ左之助さんは胡座を掻き、目刺の頭を齧って骨ごと食べていく。野性味溢れる姿に思わず、私は苦笑いを浮かべてしまう。

 

「そういや知ってるか、糸色。また例の人斬り抜刀斎を名乗る男の噂が広まってるみたいだぜ」

 

「人斬り抜刀斎……」

 

ゴクンと目刺の塩焼きを飲み込んだ左之助さんの言葉に私の動きは止まる。そうか、もうすぐ「るろうに剣心」が始まることになる。

 

もう左之助さんとはお別れになるわね。

 

ごろつき長屋の生活も良かったけど。主人公の緋村剣心は当然のごとく、左之助さんの周りにも戦いの戦火は集まってくる。

 

そうなったら、私はきっと彼の邪魔になる。

 

「やっぱり人斬り抜刀斎って強えか?」

 

「さあ、どうでしょう。少なくとも私は(・・)東京で左之助さん以上に強い男の人を見たり、そう言った類いの噂話は聞いたことありませんよ」

 

「糸色、また春画描いたのか」

 

「まだ今日は描いてませんよ?」

 

「描くのは描くのかよ」

 

「それが私の仕事ですもの」

 

フンスと少しだけ胸を張って左之助さんに言うと少しだけ嫌そうに「たまにお前以外にも描かせてくれって掴まるのは面倒臭い事、この上ねえんだかな」と左之助さんに苦情を言われた。

 

「喧嘩屋の斬左が通じるか、試すのも悪くねえか」

 

カッコいいことを言っている左之助さんだが、彼はお味噌汁をお米にかけ、ネコマンマにした汁掛けご飯を一気に口の中に掻き込んでしまった。

 

すごく、お行儀が悪いわね。

 

そんなことを考えるのも束の間、左之助さんの部屋───私の隣家に押し入る騒ぎが聞こえ、チラリと左之助さんを見ると「食い逃げがバレたか?」と呟いた。

 

ああ、ほんとうに杞憂に終わると良いんだけど。

 

 

 

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