武田観柳の屋敷に留まって二日目、私の生活は場所を変えた事と左之助さんに会えない事を除けば以前と余り変わらず。ただ、絵物語や水墨画を描く回数は減り、仕事の物書きに耽る時間が増えた。
それでも出来ることは出来るだけやる。
きっと左之助さんが助けに来てくれると信じているから、私も私なりに御庭番衆の求める物を突きつけ、武田観柳よりも私の方に利益を見出ださせる!
「この絵と内容はどういうことだ」
「───以前、この屋敷を訪れたとき、武田さんは
「御庭番衆を相手に取引を持ち掛けるか」
「四乃森蒼紫さん、あなたは『お前の知恵を御庭番衆のために』と言った。つまり、この図解を差し出す事はあの時すでに想定していた」
以前の訪問の際、彼だけが私の差し出した図案の欠点───武田観柳にとって都合の良すぎる
私に出来るのは御庭番衆に不利益を生む新造兵器の攻略法を書き記すこと。御庭番衆は剣客や隠密、忍者の流れを組む組織だ。
「貴方の望む限り、この知恵を貸します。だから私を屋敷から連れ出して…!」
必ず、この提案に乗ってくる……と思いたい。
「随分と稚拙で後先を考えていない取引の提案だな。が、その心意気は気に入った。お前の取引に乗ってやろう。般若、癋見、折を見て逃がしてやれ。────その代わり、高荷恵の回収を早めろ」
私の取引とも言えない稚拙な提案に乗ってくれた四乃森蒼紫の言葉に安堵する間もなく、今度は高荷さんを連れてくるように告げる彼の腕に焦りに任せて飛びついてしまった。
「な、なんで高荷さんのことを知ってるの!?」
「御庭番衆は元々隠密方、戦闘は当然の事ながら情報収集に於いても最強なのだ。お前の策に乗ってやるとは言ったが、あの女を助けるのは別の話だ」
その言葉に思わず唇を噛む。
そうだ。
さっき彼に提示した提案のときに高荷さんのことも話していれば解決していた。それなのに、私は目先の自分が助かる道筋を選んでしまった。
「…残ります」
「なに?」
「高荷さんが来ても私も残ります」
「罪悪感による自責など只の自己満足でしかない」
「それでも残ります」
どれだけ怖くても私だけ助かるのは絶対に違う。助かるなら高荷さんも一緒に、そして私の差し出した図案を元にして、彼らも助かるならそれで私は構わない。