左之助さんに電信を使って連絡は送ったからこれで大丈夫だとは思うけど。三回目の誘拐、お腹に赤ちゃんがいるのに不安になってしまう。
これが、いわゆるマタニティブルーかしら?
「何と送ったんだ?」
「札幌に居ます、早く来て下さい。です」
「せめて自分の安否を伝えておけ。……と言ったところで電信局に手紙は運んだ後か。相楽のヤツなら半日程度で来るだろうが、それまで大人しくしていろよ、身重の癖に警戒心の無い蛇娘が」
「へうっ!」
いきなり頭に書類の束を当てられた事を驚き、頭を押さえながら部屋を出ていく斎藤一の背中を見つめる。刀、武装錬金のヤツを納めてるんだ。
籠手の部分は
「しとり、お散歩する?」
「おさんぽ!」
私の提案に笑顔になるしとりと手を繋いで、役所の中を歩きつつ中庭に移動したら何処か気弱そうなおじさんと永倉新八が話しているのが見えた。
「じょりじょり!」
「ん?おお、お嬢ちゃんか!」
「あ、待って、お母さん遅いから!?」
左之助さんのように軽やかに走っていくしとりの事を少しの距離なのに咳き込み、ふらつきながらも追いかけ、やっと追い付く頃には永倉新八に飛びつき、しとりは彼のお髭を触っていた。
「…ゔぇッ、ゲホッ…コフッ…?!…」
「オイオイ。大丈夫か?」
「だ、大、じょぶっ、ゴボッ……ぇ?……」
ポタポタと口から血が滴り落ちる。
な、なんで?核鉄と神酒のおかげで大丈夫な筈なのに、しとりの顔から笑顔が無くなりそうになっていることに気付き、笑顔で彼女の事を見上げる。
「ふ、ふふ、林檎さんを食べ過ぎちゃったわ♪︎」
「りんごさん?」
「そうよぉ…お母さん、しとりに内緒で林檎さんをいっぱい食べ過ぎちゃったから赤いヨダレが出ちゃったの。お父さんには内緒よ?内緒にしてくれたら、しとりにも林檎さんをあげるからね?」
「りんごさんっ、食べる!」
私の胸に飛びついてきたしとりを受け止めつつ、両手を前に差し出して手のひらに付いた血を永倉新八に拭き取って貰い、口許の血も拭き取って貰う。
「お嬢ちゃん、そりゃあ結核か?」
「沖田隊長と同じ病を…」
「……けほっ、大丈夫ですから主人や斎藤さんには黙っていて下さい。きっと大変な事になりますから、それに函館なら温泉もありますし」
もしも肺結核なら今の日本の医療じゃ治せない。治すために必要な薬を作るにも北海道の交易だと手に入り難いものばかりだから……。