核鉄の治癒能力を利用して吐血する程に弱っていた身体を酷使している事実に不安を感じるけど。しとりとこの子が大きくなるまで絶対に生きる。
左之助さんに知られたら大変な事になるのは目に見えているし。なによりドクトル・バタフライが私を札幌に送った事にも理由はあるはずだ。
「ん!母ちゃんのね」
「綺麗な石ねえ、何処にあったの?」
「あそこ!」
私が聞けばしとりは楽しそうに指差しながら私を綺麗な石を見つけたところまで連れていってくれ、道端に落ちているとは思えない程に綺麗な石……翡翠や紅玉石に見えなくもないけど。
きっと気のせいよね。
北海道に在るなんて聞いた記憶もないもの。
「其処の婦人、少し訊ねたいことがある」
「はい?」
重そうな荷物を担いだ男の人が話しかけてきた。この辺りの人なのかと思いながらしとりに渡された石を受け取りつつ、彼を見上げるように立ち上がる。
「此処に斎藤一という男はいるか?」
「えと、斎藤さんですか?生憎、私と娘は旅行で此処に来ているので此処の人には詳しく無くて、その人に何かあったんですか?」
「……先程の質問の際に心臓の音が僅かに乱れた様に感じたのだが、呼吸も浅く濁りがある、それに動くときに身体を庇っているがなにか重い病か?」
斎藤一の名前に驚き、叫びそうになるを我慢したら変な事を呟き、私の身体に纏わる状態を的確に言い、ジッと静かに彼は私を見下ろしてきた。
しとりは石を拾うのに集中している。
「多分、肺か心臓です。でも私は娘とこの子が、ふたりが大きくなるまで絶対に生きるつもりですから心配して頂かなくて大丈夫ですよ」
「そうか。いや、いきなり見ず知らずの婦人に失礼な態度を取った。すまない」
彼の問いかけに私はしとりとお腹を優しく撫でながら、そう言うと彼は荷物を担ぎ上げ、穏やかに笑みを浮かべて歩き出した。
そこで漸く思い出した魚沼宇水の弟弟子を名乗り、武器を壊されていた斎藤一に競り勝った剣客兵器の客将の、名前はそう────。
「伊差川糸魚……あっ」
「何故、俺の名を知っている」
ま、また、やってしまった。
「し、しとり、行きましょうか」
「逃げるな、逃げれば殺す」
「ん!そういうのは、いっちゃだめ!」
「ぬっ……暫し話を聞かせてくれ」
しとりを抱き上げて逃げようとしたら風呂敷に手を掛ける伊差川糸魚に、しとりが人差し指を突きつけて、私がいつも言っている言葉を彼に言い、少し悩んで彼は動きを止めて茶屋に視線を向ける。
左之助さん、これは逢い引きじゃありません。しとりとこの子を守るために必要な事なんです、どうか許して下さい。…………あっ、一瞬だけ左之助さんが見えた気がする。
すごい笑顔だった、ものすごく怒っているわ。