「改めて問う。俺の名前を知っている理由を素直に話してくれ。一人の武術家として女子供に手荒な真似だけはしたくない」
「……分かりました。私が貴方の事を知っているのは猛者人別帳に乗っていたからです」
「何処で見たのかは問わない。だが、お前が斎藤一と繋がっているということは理解した!」
その言葉には語弊を感じるけど。
左之助さんの友人、私はいつもお世話になっている人、しとりからすると、お父さんと仲良しのお巡りさんになるのかしら?と考えながら、湯呑みを掴んで熱いお茶を飲み、お団子を食べる伊差川糸魚に苦笑する。
「繋がり、といえばそうなのかもしれませんね。私の主人と斎藤さんは仲良くしていて、しとりも斎藤さんを気に入っていて」
「この子が斎藤一を?」
「ん!さいとお、つよい!」
フンスと胸を張って話すしとりに困惑する伊差川糸魚。彼の中だと斎藤一は尊敬する魚沼宇水を殺した人であり、私やしとりの話す人とはかけ離れている。
「婦人の言葉を信じていないわけではないが、やはり俺は兄弟子を討った斎藤一を信じることは出来ない。故に、一度戦わなければならない」
「生憎と小僧の相手をしてやるほど俺は暇ではない。糸色、無闇に出歩くなと言った筈だが?」
「す、すみません」
斎藤一の呆れた声に謝りながらしとりを抱き上げる。今回も私の不注意と無警戒のせいで、みんなに迷惑を掛けてしまっている。私は、一体何をしたいんだろう。世界も剣客兵器も怖い筈なのに出歩いて、誰か不安を吐き出せる人を探していた?
しとりを危険に晒しておいて?
本当にお母さん失格だわ。
「お前が斎藤一だな。我が兄弟子、魚沼宇水の仇を取りにやって来たぞ!」
「うすい?……嗚呼、あの男か」
「ん!母ちゃん、こっち!」
「え?あ、まって…!」
いきなり走り出したしとりに連れられて二人の傍から離れたその時、真後ろで稲妻のように鳴り響く金属の衝突する音が聴こえ、後ろに振り返ると黄金の亀甲と日本刀の武装錬金が火花を散らしていた。
「ん!んーっ!!」
「あっ、え、ご、ごめんね!?」
私の手を引っ張ってくれたしとりのおかげで恐怖に竦んでいた身体に力が戻り、彼女を抱っこして永倉新八や鷲塚慶一郎のいる警察署へと向かう。
ごめん、ごめんね、お母さんのせいでッ……まだ小さなしとりにこんな怖い思いをさせて、しっかりしなくちゃいけないのに、私は何をしているんだ。
「大丈夫。しとりは大丈夫よ」
「…ん…っ母ちゃんも……」
「えぇ、お母さんも大丈夫だからお母さんの胸に顔を当てて小さくなってほしいの」
背中越しに響く音に走る足が震える。
警察署はすぐ其処なのに遠く感じるッ…!