阿部十郎の登場と二人の擦れ違い、擦れ違い?擦れ違いなのかな?の修正やお互いの齟齬も少しだけ無くなったものの、伊差川糸魚は斎藤一を倒すことは依然としてやめるつもりはないそうです。
「糸色、次に出歩けば助けんぞ」
「は、はい、すみませんでした」
「ん。あやまれて、えらいね!」
「うぅ、ごめんね。しとり」
しとりがそう私を褒めるように言ってくれ。
なんだか嬉しいような、お母さんなのに申し訳無い気持ちになりながら「しとりもお母さんを助けてくれてありがとう」と彼女の頭を優しく撫でて、ぎゅうっと彼女の私よりも小さな身体を抱き締める。
北海道に来てからこの子に負担を掛けてばかりで私は何をやっているのだろう。この身体の不調も日によって変わるし、瘴気以外に原因がある?
ふと金色の蝶が視界の端に映り込んだ。
これはドクトル・バタフライが現れるとき、必ず事前に寄越すようにしている合図だ。
「ちょうちょ!」
「どうやら元凶も来たようだな」
「斎藤一君、私は元凶ではなく相楽左之助君の邪魔を受けずに彼女を助ける手段を探していただけだよ。尤も彼女の不調の原因は幾つもあるようだが」
「斎藤さん、しとりをお願いします」
「相楽を待たなくていいのか?」
その問い掛けに身体が震える。
いつも私を守ってくれる大好きな人。でも、この不調の原因を治すためにドクトル・バタフライは左之助さんが近くに居ると危険だと考えている。
ゆっくりと四人から離れて、ドクトル・バタフライと二人で警察署の待合室の長椅子に座り、静かに彼の話を聞くために言葉を切り出す。
「ドクトル、お願いします」
「OK。先ずは君の不調の原因を先に教えよう。一つ目は妖怪の憑依、この北海道で取り憑いたものは既に摘出しているが、その瘴気は君の身体の中に微量だが残っている。二つ目は肺に患っている病、三つ目は君の願った『特典』だ」
「一つ目と二つ目は分かりますけど。三つ目の『特典』はどういうことですか?」
「糸色景、君の願った『前世の記憶の保持』は広義的に言ってしまえば前世の出来事を丸ごと記憶しているという事になるのだよ。神々の匙加減は曖昧……いや、私達を愛しているが故に贈り物の大きさを誤った」
ドクトル・バタフライの説明を分かりやすく言えば私の選んだ「特典」は謂わば世界規模に匹敵するスーパーコンピューター。ただし、私自身の個人用や家庭用の普通のパソコンであり、その機能を十全に扱えるコンピューターのスペックは持ち合わせていない。
つまり、こういうことだ。
「じゃあ、どうするんですか?」
「私のチャフの武装錬金『バタフライエフェクト』を使って君の脳機能に制限を施す。二年前に施した膨大に流れ込む記憶と知識のONとOFFの切替を出来るようにしたときと同じシステムだ」
「……あ、あれですか……」
あの時は見るも恐ろしいドクトル・バタフライの謎のダンス映像を見続けるという幻惑を見てしまったけど。今回は大丈夫なのでしょうか?
「私は親しい友人を喪うのは辛い」
「……はい、それは分かります…」
「では、私は準備のために一度戻る。相楽左之助君に相談するのは構わない。できれば付き添うのは止めるように言っておいてくれたまえ」
そう言うとドクトル・バタフライは黄金の羽を振るわせ、空に舞い上がっていく。鱗粉のように舞うチャフを手のひらに受け止め、静かに彼の飛び立つ背中を私は黙って見続ける。
ドクトルの武装錬金の名前は感想から頂きました!
ありがとうございます!!