翌日。
ドクトル・バタフライの脳機能に制限を施す手術は無事に成功したらしく、いつも感じていた偏頭痛や立ち眩みは微弱な物に変化している。
心肺器官に関しては正式な医者では無いドクトル・バタフライは手術は行っていないそうだけど。サルファ剤やペニシリンの材料は手に入り次第、私に配送するという手紙が机に置かれていた。
「(カプセル剤を作る技術、もうあるんだ)」
小さな携帯用の薬箱を軽く振り、太陽の光で中身を透かして眺める。それに頭に仰々しく包帯は巻かれてはいるけど、これは手術後と伝えるために、ただ巻き付けているだけの飾りですね。
そもそも
この「特典」を制限する前はサルファ剤の事を考えれば一秒も経たずに「成分から歴史まで延々と流れ込んできていた」のに、今は「サルファ剤の成分と作り方のレシピだけ」が頭の中に流れ込んで来る。
「母ちゃん!!」
「しとり、おはよぶっ」
ドタドタと走ってくるしとりに両手を広げて朝の挨拶をしようとした瞬間、彼女の柔らかなお腹が顔にぶつかり、ぎゅうっと力一杯に私を抱き締める彼女の身体を抱き締め返してあげる。
「お母さん、元気になったよぉ」
「ん!ギューッ!」
「フフ、ぎゅーっ」
ふと視線を感じて部屋の入り口を見ると今まで見たことのない満面の笑顔を向ける左之助さんが、ドン引きする斎藤一達を引き連れて、そこに立っていた。
「景、寝ずに話がある」
ふいっと視線を逸らすように布団の中に潜り込み、何も知りませんと訴えるように態度で示す。しとりの寝息を聞きつつ、チラリと布団から顔を覗かせると目の前に……いえ、唇が触れる距離に左之助さんがいる。
「ひッ…んやッ…!?…」
「四日もオレから離れやがって、どれだけ心配したと思ってるんだ。蝶野のオッサンも次に見つけたら本気でぶん殴るからな」
がっしりと頭を両手で挟まれ、ぐにぐにと頬っぺたを揉むように撫でられ、眼鏡がずれるのを感じながら左之助さんの言葉を聞き続ける。
「……はあ、怪我が無くて良かった」
「……ご、ごめんなさい…」
「だが、腹の子が生まれたら覚えとけよ?」
せ、せめて休ませてもらえますか?