私が眠っている間に剣客兵器の役人襲撃を食い止めた左之助さん達に個魔の事を伝えるのは気が引けるものの、やっぱり大切な娘の将来に関わることは家族で共有しておきたいです。
そもそも手術前の私は異様に隠し事をしようとしていた。そうなるように誘導されていたようにも感じるけど、これには身体の中に在ったモノの有無も関係しているのでしょうか?
「左之助さん、今日もちょっと良いですか?」
「どうかしたのか?」
「実は、しとりが妖怪と仲良くなって」
「ん!こまさん!」
ゆらりとしとりの影から現れた彼女に左之助さんは反応を示すことはない。やはり、そこは原作と同じように他の人には見えていない。
「嬢ちゃん、呼んだかい?」
私が見えているのは母親だからかな?
「見えねえが、居るんだな?」
「はい。左之助さんの目の前にいます」
私がそう言った次の瞬間、左之助さんの右拳が個魔の真横を突き抜ける。見えなくても殴れば勝てるという考え方は正解だと思います。
「ん!しとりもする!」
「母者止めてくれよ」
「え、えぇ、どうしようかしら?」
ペチペチと影と事をしとりは優しく叩いている場所を左之助さんに教えた瞬間、左之助さんの拳が個魔の顔を突き抜け、後頭部から拳がはえていた。
霊感の無い人は妖怪を見えない人だ。
「触ること」「話すこと」「見ること」の出来ない人には、やっぱり個魔は見えない。河童の河太郎や他の妖怪が見えるのは彼らが強い妖怪だけ。
「見えねえし、当たらねえな」
「嬢ちゃんの父親、ワイルドだな」
「わいるどぉ?」
「野生的って意味だけど。左之助さんは硬派でカッコいい人ですよ?」
「褒められるのは嬉しいけどよ。オレは誰もいないところに話し掛ける嫁と娘に対して、こう、何って言えば良いんだ?」
そう言って腕組みして唸る左之助さん。
どうやら本当に彼は個魔を見ることは出来ないようで、私が個魔を見えるのも謎のままです。妖逆門も始まる時代なのかも分からない。
「母者、何とかしてくれ」
「ん!母ちゃん」
「えぇ、どうしましょうか?」
「しとり、オレに見えるように出来ねえか?」
「ん!わかんない!」
フンスと自信満々に無理な事は無理だと伝えるしとりの頭を優しく撫でてあげる。自分の意思をハッキリと相手に言えるのは、とても良いことです。
「父ちゃんも見たいんだよなあ」
「んー、ん!」
「炭筆と紙?」
「ん!かく!」
宿舎の備え付けの机に向かっていくしとりを追い掛け、洋式椅子に彼女を座らせて、カリカリと個魔の事を見ながら絵を描くしとりを眺める。
……真っ黒な人ですね、これは。