「景さん、三度目になるわね」
「うっ、はい…」
薫さんの何処か戸惑いと呆れを孕んだ苦笑いに頷き、私は三度目の誘拐を経験した事は事実なので反論も否定もせず、素直に彼女の言葉に答える。
一度目は般若、二度目は外印、三度目はドクトル・バタフライ、三度目の誘拐は私の身体の不調を治すために静かに出来る場所を選んだ訳だけど。
現に剣客兵器も私を狙っているし。
もっとも彼らの狙いは私の前世の知識、とくに兵器や武器に関する知識を欲しがっているのは斎藤一や鷲塚慶一郎などに札幌で聞いている。
「景さんは狙われやすい体質なのかしら?」
「そ、それは言い過ぎなのでは」
「でも三度目は流石にアレでしょう?」
「薫さんも一回拐われてるじゃないですか」
ボソリと呟いた瞬間、薫さんが固まる。
「「…………」」
「剣心、ありゃあ喧嘩か?」
「いや、気まずいだけでござるよ」
左之助さんと緋村剣心の言葉にピクリと薫さんが反応した。別に喧嘩しているつもりはないんですが、私も薫さんも外印関連は余り思い出したくない苦渋の数日だったので、少し嫌になっているだけです。
「あの孤島は怖かったですね」
「そうね。二度と行きたくないわ」
私達は沁々と言いながらドクトル・バタフライの連れ去った外印の最期を知らないため、生きているのかも怪しい彼の存在を不安に思ってしまう。
自称・糸色景を理解する男。
私を最も理解して愛しているのは左之助さんです。まだ、あの頃は祝言を挙げていない、いわゆる事実婚の状態でしたけど。
それもそれで楽しかったです。
「あ、そういえば剣路君に恋敵になるかもしれない男の子に会った話をしましたっけ?」
「えっ、そんなの聞いてないわ!?」
「天兵君と言うんですけど」
小樽で出会った陸奥出海の息子であり、いずれ陸奥の名前を受け継ぐ天兵君の話を話していると、剣路君とお手玉で遊んでいるしとりが頬っぺたを少し赤らめている事に、剣路君がショックを受けている。
まあ、まだ三人は子供ですから未来でどういう風に成長していくのか。それもまた私の数少ない楽しみではありますけど。
「いっそのこと許嫁にして」
「許すわけねえだろ」
ハッと名案を思い付いたみたいな表情を見せる薫さんに左之助さんが即座に注意した。許嫁にしてしまったら二人の未来を縛ることになりますし。
それにウチの家系は色々と大変な事になりそうなので許嫁にしたら剣路君を狙う人が現れるかも知れないので、まずはお友達として過ごしましょう。
「剣心、お前の餓鬼にしとりはやらんぞ」
「おろ。拙者に言われてもなあ」
チラリと剣路君を見下ろす緋村剣心は「まあ、その時は剣路の生き方に任せるでござるよ」と答えて、お手玉を使って二人の遊びに加わる。