「母者、妖怪の気配を感じるよ」
そうしとりの影から現れた個魔の呟きに「うしおととら」の外伝を描いていた手が止まり、借家の中庭に視線を向けると子供がいつの間にか立っていた。
ハッキリと彼女に見覚えはあるけど。彼女の詳細な情報や知識は頭の中に流れ込んで来ることはない。まあ、話していれば思い出せるでしょう。
「こんにちは」
「あっ、えと、こんにちは」
「何かご用?」
「……その、遊びに来たの……」
「あら、そうなの?じゃあ、しとりと遊んでもらえると嬉しいわ」
小さな番傘を受け取って彼女を家の中に招く。個魔は「大元締め様が来るなんて珍しい。母者と嬢ちゃんは本当に見ていて飽きないね」と呟いた。
左之助さんは緋村剣心達と話しているし。
あまり大きな声で叫ぶのも今の私にはとても辛いことになるから、妖逆門の関係者なら楽しく普通の「げぇむ」をやってもらえば良いだけ。
「あ、あそぼ」
「ん!いいよ!こまも!」
「アイサー、嬢ちゃん」
三人がお手玉やおはじきで遊ぶ音を聞きつつ、私は外伝の続きを描く。楽しく遊ぶ笑い声に心地好さを感じながら、いつもより早く書き終わってしまった。
良いことだけど。
もっと描いていたいという気持ちが溢れ、気が付けば「うしおととら」の外伝を半分近く描いていた。やっぱり子供の笑い声を聞いていると心が安定して、いつも以上に集中出来るのかしら?
「母ちゃん、かった!」
「あら、しとりは強いのねえ……フフ、貴女もしとりと遊んでくれてありがとうね」
「うぅん。私も楽しかった。しとりちゃん、またあなたのところに遊びに来ても良い?」
「ん!つぎもかつ!!」
「ふふふ、次は負けないよ。いつか妖逆門に来てくれたら、いっぱい遊ぼうね」
そう言うと彼女は霞のように消えて、うっすらと見えていた個魔の身体が、いえ、私に見えるように存在が濃くなったのだろうか。
「大元締めお墨付きの個魔になるのは予想外だが、次の妖逆門の始まるときは私は嬢ちゃんの案内役で確約しちゃったみたいだね」
「かくやく?」
「必ず守る約束みたいものよ」
「ん!こまもともだち!」
「……フフフ、影の私が友達ね。OK。また生まれ変わっても私は貴女の友達になってあげる。母者も今後とも宜しく頼むよ」
「今更聞くのもあれだけど、貴女って私と同じ?」
「本当に今更だけど。そうだよ」
彼女もやっぱり転生者だった。
ここ一ヶ月以内にススハム、不破信二、個魔の彼女に出会ってしまったけど。こうも転生者の生まれる時期が重なるのは何かしら理由があるのだろうか。