「袋竹刀かな?」
「はい。剣路君が何か頑張っている様なので」
「マセガキね」
「痛くねえな」
「かっこいい…!」
井上君の作った綿と藁を使った袋竹刀の玩具を振るっている剣路君に、しとりはパチパチと拍手しながら目をキラキラさせている。
しとりは蛮竜の手入れにも興味を示しているし。ひょっとして剣術に興味があるのかしら?と考えながら薫さんと久保田さんの二人と一緒に作ったクッキーと紅茶を居間に運んでいく。
「薫さんとしては神谷活心流を?」
「うん。大きくなったときに剣路が習いたいなら弥彦と一緒に教えるつもりだけど。男の子だから弥彦みたいに飛天御剣流に憧れちゃうかな」
「あり得そうですねえ」
「阿爛、明日郎、クッキー食べちゃうわよ」
コトリと大皿を机に置くと久保田さんが中庭で袋竹刀を振っている剣路君と遊ぶ二人の名前を呼び、しとりも剣路君の手を引いて此方に戻ってくる。
「薫さんみたいに真っ赤ですね」
「ま、まあ、あの頃は若かったから」
「嬢ちゃん達は今も若いやろ。二十代やん」
「……張、ふと思ったんだけどさ」
「なんや鎌足」
「抜刀斎って志々雄様より歳上よね」
「せや……なッ」
二人の言いたいことは分かるけど。
そうなると左之助さんも十五歳の私と祝言を挙げているので対象になるので止めてほしい。数え年の私が子供のように扱われるじゃないですか。
「剣心、言われてるぞ」
「愛ある婚姻でござる」
「抜刀斎は三十越えよね。で、薫ちゃんが……言わないから睨まないでほしいかな」
緋村剣心のそれ以上の言葉は続けるなという視線に両手を上げて降参する本条さん。その隣でしとりと剣路君にクッキーを差し出す沢下条さんの前にティーカップを置き、山積みのクッキーを見つめる。
作りすぎたけど。
すぐに無くなりそうですね。
「景、この黒いヤツはなんだ?」
「珈琲を混ぜたクッキーです」
「珈琲を混ぜる…」
私の選んだ「特典」の「料理のスキル」と何だか今の「前世の記憶の保持」は相性も良くて、必要な分量や成分、準備の行程を瞬時に頭の中に流れ込んで来るので、かなり助かっています。
ドクトル・バタフライのおかげですね。
「相楽、それはワイのクッキーや」
「お前は白いヤツ食ってろよ」
「いやや、黒いのがええんや」
「あんた等、子供の見てる前で馬鹿やってんじゃないのよ。しとりちゃんと剣路君にはお姉さんがクッキーを取ってあげるわね♪︎」
本条さんにクッキーを取ってもらえたことを喜ぶ二人の笑顔を眺めながら紅茶より飲みやすいホットミルクに、ほうっと温かい吐息を溢す。
ミルクティーも良いけど。
私は個人的にホットミルクが好きです。