山県有朋の剣客兵器の要求を断るという話を聞く限り、彼らの組織を完全な壊滅ではなく大ダメージを与えることで行動を制限するという方針の様だ。
「最優先は無血勝利だがやむを得ない場合は剣客兵器の組織壊滅になる。───だが、奴らを殺すのではなく我々の目的は捕縛だ。緋村、彼らを止めるために不殺の剣を今一度だけこの国のために振るってくれ」
「……あくまで不殺の剣客としてならばお受けするでござる。しかし、山県さんは大久保卿の様に人斬りの拙者を求めているわけではないのでざるか?」
「昔ならいざ知らず今の緋村は剣を振るえる市民と同じだ。こうして内務卿の私が前途ある市民に人斬りを頼む事は、本来ならばやってはいけないことだろう」
「確かにオッサンの言う通りだな。だけど、景を明治政府に勧誘するのは止めろ。コイツは面倒事に関われる身体じゃねえんだ」
ぐいっと私を肩を抱き寄せて山県有朋に啖呵を切る左之助さんの言葉に本条さん達は首を傾げている。そういえば、お腹にいるこの子の事はまだ函館組の人には話していませんでしたっけ。
「ああ、糸色殿は身重でござったな」
左之助さんの言葉の意味を思い出した緋村剣心はポンと手を叩く納得し、緋村剣心の言葉にみんなの視線が集まり、ポッと頬を染めてしまう。こうもハッキリとみんなに自分の懐妊を教えるのは照れてしまいますね。
「……そちらも諦めよう。大久保卿の資料には身体の弱さも書かれていた。出来るだけ温かく療養と出産に備えることを勧める」
「なんでワイには別嬪の嫁が出来んのやろか」
「性格じゃないかしら、ねー?」
「ねー!」
「ん!ホウキもがんばれ!」
「チビ共も大人になれば泥臭くて汚ない大人の世界を知ることになるけど。コイツら、わりと普通に何でもやれそうやもんなあ」
日本の誇る最強の剣客と喧嘩屋の子供ですからね。並大抵の逆境では怯むことなく二人とも嬉々として乗り越えてくれると私は信じています。
「景さん、私親友なのに聞いていない!?」
「お、落ち着きましょう、近いです」
ワクワクする薫さんを連れて居間の端に移動して、いつ頃産まれるとか名前はどうするとか楽しそうに聞いてくる会話がシリアスな空気を壊す。
まあ、こういう雰囲気の方が好きですけど。
「まあ、家族が増えるのは良いことだ。緋村、剣客兵器の捕縛を出来るだけ早急に頼めるか」
「承知したでござる。左之、お披露目するときは事前に言って貰わねば拙者も薫殿もお祝いの準備が出来なくなるでござるよ」
「お祝いはいつでもいいさ」
そう言って話す二人と山県有朋の溜め息を聞きつつ、やっぱり大変な事になってきたなと苦笑いを浮かべながらしとりを抱っこしてあげる。