「飛天無限斬ッ!!」
「何度も受けるかよ!」
わざと技の名を叫んで攻撃の瞬間を教える糸色姿の振る神速の剣撃を蛮竜の刀身で受け止め続けるのは無理だ。いくら妖刀と言われていようが刀身は鋼だ、剣を受け続ければ曲がり、折れるのは確実だ。
「うおらっ!!」
「大振りは当たらないよ、左之助君」
「チッ。流石に避けるか」
横薙ぎに大鉾を振り抜いて無理やり糸色姿を間合いの外に弾き出す。だが、決定打を与えられねえんじゃアイツに勝つ方法が無い。
瀬田の縮地と同等の速さ。剣心と同等の剣才。景の書き記した兵法書の中身を完全に暗記しているのか。動きの多彩さは今まで戦ってきた誰よりも多い。
「こうも僕の太刀筋を予測して受け止めるのは流石に予想外だな。……さて左之助君と戦うには飛天御剣流だけだと役不足みたいだし、
「がはあっ?!!」
大小一対の刀の刃毀ぼれを確かめる糸色姿の言葉に全身の毛が逆立つ程の悪寒を感じ、咄嗟に蛮竜を盾代わりに突き立てて構えた瞬間、余りにも強すぎる衝撃を受けきれず、オレは身体ごと後ろに弾き飛ばされる。
「その動き、二天一流・
「新撰組は情報通だね。いや、あの地獄門を閉じるときに浅葱色の羽織を着た剣士が居たって話は聞いているし。君がそうなのかな?」
鷲塚の叫び声が聴こえる最中、オレは血を流す頭を押さえながら立ち上がり、肩口と脇腹の刀傷に視線を向け、地面に転がる蛮竜を掴み、コイツが無けりゃオレの身体は細切れにされていた事に笑っていた。
「飛天御剣流の次は宮本武蔵の流儀かよ」
口の中に溜まった血を吐き捨て、オレは糸色姿を見据える。あの時は不意を突いて殴り倒したが、今回は不意を突けるほど余裕がねえ上にオレを本気で殺すために、糸色姿は剣を振っていやがる。
「いざ、参る!」
「んだらあっ!!」
大小一対の刀を左右反対に持ち変えた糸色姿は地面を踏み締め、今度は無限に等しく見ることさえ不可能だった神速の剣撃とは違う一撃必殺の剣撃を振り抜き、オレの間合いで真向勝負を仕掛けてきた。
「おおぉおおおっ!!!」
「流石は東京一の喧嘩屋、鍔迫りの間合いじゃ僕が力負けするか!?」
糸色姿の振るう大小一対の刀が横薙ぎと振り下ろしの一撃を真っ向で斬り結び、鍔迫り合いに持ち込み、力任せに糸色姿を地面に叩き伏せ、がら空きの胴に二重の極みを撃ち込む。───が、柄を捻った打突がオレの脇腹の傷口を抉り、腹に蹴りを受けて押し退けられる。
「ゴフッ、ゴホッ…!」
「あ゛ァ゛ぁ゛…痛烈な拳だよ、ハハハッ!」
血反吐を吐いて笑う糸色姿は刀を杖代わりに立ち上がるなり、オレに切っ先を突き付けるように構えて、心の底から楽しそうに高笑いする。
不死身かよ、コイツ?!