飛天無限斬と熱風の衝突で生じたカマイタチを受けたオレは全身を刻まれ、土砂に埋もれながら糸色姿を探すように頭を動かすが土煙のせいで前が見えない。
姿もオレと同じで埋もれて……いや、縮地を使えるヤツが土砂に埋もれる訳もないか。蛮竜も視界の端に見えるが、手が届かねえところか。
「やあ、生きてるかい?」
「……お前、本当に不死身かよ」
「こんなに痛いのは久しぶりだね。飛天無限斬の剣撃を力任せに押し返すなんて考えても普通は出来ることじゃないんけど。流石は景の気に入った男だ、すごく良い勝負が出来たよ」
ゆらりと土煙を切り裂いて現れた糸色姿は平然とした口調と違って全身に傷を負い、右腕は指先に至るまで全てが鮮血に染まっている。
「ぐっ、ぬおおおぉ…!」
あの衝撃の余波をオレより近くで受けていた筈の男が立っている事実に苦笑し、ゆっくりと土砂から這い出て、土に埋もれていた蛮竜を引きずり出し、糸色姿に向き直って蛮竜を構える。
「まだまだやれるぜ、オレはァ!」
「ハハハッ、凄い気迫と意地だけど。ほら、両腕の骨が折れちゃったみたいでね、今回は僕の負けだ。まあ、次に戦うときまでに仕上げておこう」
「誰が逃がすかッ……テメェは景を心配させてんだ、謝ってから警官に捕まりやがれ!!」
くるりと背中を向けて逃げようとする糸色姿の襟首を掴んだ瞬間、さっきよりも糸色姿の背丈に違和感を感じ、明らかに掴み上げた糸色姿の重さに首を傾げる。
「…なんかお前縮んでねえか?」
「おっと野暮な事は聞くものじゃないぜ」
「いや、なんかさっきより景に似て…」
「ハハハッ。兄妹だからね」
ジリジリと逃げるために間合いを拡げる糸色姿に問い詰めようとした瞬間、地鳴りと共に地面が爆ぜ、オレの横腹に石礫がめり込み、横薙ぎに倒される。
「土井君か、助かるよ…!」
「ごふッ、待ちやがれ!」
咄嗟に糸色姿の袖を掴んだ瞬間、オレはハッキリと見てしまった。膨らみがある、さっきまで見えていた平たい胸筋が丸みを帯びているのだ。
「見てしまったね。左之助君」
「……まさか、本当は姉ちゃんだったのか?」
「失礼だね、僕は兄さ。───けど、僕がこうなったのは景の病を癒やす手懸かりを手に入れるために、それだけは伝えておこうかな」
そう言うと今度こそ糸色姿は逃げていった。
いや、どうなってやがるんだ?
「……妖怪の仕業か……」
そういうことにしておこう。
ズキズキと痛む頭を押さえながらオレは座り込み、土煙が晴れるのを静かに待つ。剣心達に加勢しに行きてえが、流石に血を流しすぎた。
少し休まねえ…と……な…。