姿お兄様がすがたお姉様に変わっているという可能性の高さにドキドキして、少しだけ夜更かししてしまいました。やはり「らんま1/2」の様に大変な事になっているのでしょうか?
そういえば糸色家の仕来たり。
見合いの儀はどうなるのだろう。姿お兄様は今年で二十二歳になりますけど、祝言を挙げたという話も恋仲の女性がいるという話は聞いていませんし。
「ま、まさか殿方と?」
思わず、ゴクリと唾液を飲んだときです。
いきなり中庭から「実の兄で衆道を考えるのはやめておくれ」という声が聞こえて、そちらに視線を向けると片腕を三角巾で吊るした姿お兄様が包帯を顔や首、少しはだけた身体にも巻いた格好で苦笑いを浮かべていた。
「やあ、遊びに来たよ」
「姿お兄様、左之助さん達が出払っている時に来るのは些かズルいと思います。私じゃお兄様を捕まえることも逃げることも出来ないじゃないですか」
「ハハハッ。拐いに来た訳じゃないよ、僕は景の病気を治す薬を持ってきたんだ。この前はまだ完成していなかったから渡せなかったけどさ」
「……劇物は要りませんよ?」
「まあまあ、安全だからさ」
ススッと襖を閉めようとする私の動かす襖に手を掛け、にっこりと微笑んだ姿お兄様は草鞋を脱ぎ、ふらつきながらも部屋の中に入ってきた。
こういう押しの強さは見習うべきなんだろうけど。実の妹と夫の部屋に平然と入ってくるのは止めてほしいのですが?と思いつつ、姿お兄様は懐に手を差し込み、私に冊子と巾着袋を差し出してきた。
「……あの、これは?」
「僕の煎じた薬と製法を記した本。効果は確かめているから問題ないけど、僕としては闘気吸引体質になって健康を維持する方法もありだと思うんだけど」
チラリと私を見る姿お兄様から距離を置く。実の妹の背中にあるツボを押そうとするなんて破廉恥です。そのツボを押すなら左之助さんに頼みますからね?
「景、帰ったぞー」
「かえたぞー!」
ガラリと中庭ではなく廊下と繋がる襖を開けて入ってきた左之助さんとしとりが姿お兄様と出会う。刹那、草鞋を掴んで屋根に飛び移るお兄様に左之助さんの手が、あと少しというところで届かなかった。
惜しい、あと少しだったのに。
「じゃあ、左之助君に伝えておいてくれ」
そう言うと姿お兄様は一瞬で消える。
縮地の速さを追える訳もないですからね。
「何もされてねえか?」
「病気の薬と製薬法の冊子を貰いました」
「見せてくれ」
「どうぞ、しとりはお母さんと一緒に手洗いとうがいをしに行こうね?」
「ガラガラ!」
子供って擬音で覚えるので可愛いです。