姿お兄様のくれた薬を調べてみたところ、ドクトル・バタフライの作ったサルファ剤とほぼ成分は一致し、お兄様の私を心配してくれる優しさと、独力でここまで辿り着ける彼の才能に引いてしまう。
天は二物を与えずではなく天は万物を与える。
本当に姿お兄様は何でも出来る方ですが、やはり少しだけ私に過保護すぎる気もする。まあ、家族に愛して貰えるのは幸せなことです。
「しとり、今夜のおかずは何がいい?」
「ん!んとね…えと…」
自分の指を一つずつ折りたたんで好きなものを言おうとしているのに、自分の好きなご飯が多くて悩んでいる彼女の可愛らしさにクスクスと笑う。
今頃、左之助さんは斎藤一達と五稜郭の占領を失敗して戦略的撤退を行った剣客兵器の足取りを追うために、色々と陸軍の人達や警官隊の人達と見回り強化の議題を語っている頃でしょうか。
「(もう前世の記憶を無尽蔵に溜め込む事は無くなったけれど。やはり原作の歩みを辿ることが出来なくなるのは少しだけ怖いですね……)」
「ん!きまった、コロッケ!」
「フフ、いっぱい馬鈴薯を買いましょうか?」
「ん!いっぱいかうの!」
フンスと胸を張るしとりの頭を優しく撫でつつ、八百屋さんに向かっているとき、ふと何処かで見たような雰囲気の二人と擦れ違ったけど。
流石にあり得ないので、そのまましとりと一緒に八百屋さんに並んでいる馬鈴薯を吟味していると、しとりが「これ!」と言いながら発芽した馬鈴薯を差し出してきたので、そうっと籠に戻す。
「むう」
「しとり、あれはお腹が痛くなっちゃうよ?」
「しとり、へーきだもん」
ギュッと発芽した馬鈴薯をもう一度手に取ったしとりの言葉に困りつつ、八百屋さんのおじさんを見ると「お母ちゃんが買ってやったら良いんじゃねえか?」と購入を勧めてくるので、しとりも期待の視線を向けてくる。
……全く、仕方ないわね。
「おじさん、この馬鈴薯を買いますね」
「あいよ!良かったな、嬢ちゃん」
「ん!」
発芽したところを切り分けて蒸して、パンを削ってパン粉を作れば問題ないでしょうけど。この発芽したところには毒があるから、余り買いたくないんですよね。
それに、こんなに大きな馬鈴薯を買ってしまったら今夜はコロッケパーティーになるし、左之助さんにいっぱい食べて貰わないとですね。
「…糸色……さん?…」
ふと私の事を呼ぶ声が聴こえて、後ろに振り返ると見慣れた二人の男女がいた。……いや、なんでこんなのところに彼らがいるのでしょうか?
「……武藤カズキと津村斗貴子?」
思わず、彼らの名前を呟いてしまった。
いえ、それほど驚いているわけですけど。