武藤君は蛮竜の継承権を得るという謎の儀式を終えるために左之助さんと戦っている。そもそも蛮竜を扱えることに資格はいるのだろうか。
考えられる候補としては『年月を重ねて妖器物化した蛮竜が遣い手を選ぶようになった』や『元々の持ち主の意志が蛮竜に宿り、選り好みしている』とか、そういう感じのパターンもあり得そうね。
「オオオォオオォオッ!!」
「体捌きが良いなッ、何処習いだ?」
チラリと斎藤一に頼んで借りた警官隊の道場で木製の槍を振るって打ち合う二人を眺める。喧嘩殺法の左之助さんと基本に忠実だけど、独学の動きもある武藤君の攻防は凄まじく木をぶつける音が鳴り響くばかりだ。
「津村さんは行かないんですか?」
「……私は槍使いじゃない」
私の問い掛けに少し戸惑う津村さんの反応を見るに、やっぱり未来の世界で私は何かをやっているようですね。けど、いったい何を仕出かしたのでしょう。
そう、いつものように思考の海に沈みそうになるものの、自制して左之助さん達を見る。木製の槍の柄を押し付け、つばぜり合いをする武藤君は武装錬金を使うそぶりは見えないけど。
まだ、隠しているのだろうか。
「二重の極みぃっー!!」
「阿呆が」
二人の距離がお互いに触れる至近距離になった瞬間、武藤君の叫び声が聴こえると同時に斎藤一の罵倒が飛び、鈍い音と共に武藤君が道場の床に倒れた。
……頭突きが綺麗に決まりましたね。
「カウンターで頭突きを貰うな。馬鹿者」
「かうんたぁ?」
「返し技の事よ。しとり」
私の膝の上に座っていたしとりが頭を上げて、かわいい顔で話し掛けてくるので顎の下を擽ってあげるとケラケラと楽しそうに笑って、津村さんにも抱っこを要求し、戸惑う彼女に突撃していく。
その押しの強さは左之助さん譲りですね。
「今日はこれぐらいにしとくか?」
「ま、まだ、やれる…!」
「へえ、良い根性してるじゃねえか」
左之助さんは自分の頭突きを受けても立ち上がった武藤君の頑張りに、だんだんと楽しさを感じているのか。武藤君の喧嘩殺法と外国を巡っているときに色々と見て覚えたものを教えてあげている。
ただ、武藤君ばかりが強くなる環境に津村さんも手持ち無沙汰を感じている。緋村剣心や斎藤一に特訓を頼んでいるけど、二人とも女の子相手に刀を振るうのは問題ないけど、教えるのが嫌だそうです。
今度、姿お兄様に頼んでみようか。
多分、今も私達の事を見ている気がする。
「サンライトスラッシャーッ!!!」
「イチイチ叫ぶな!」
「あでえっ!?」
渾身の突進突きを避けられて拳骨を貰う武藤君の姿にクスクスと笑ってしまう。剣客兵器の話も最近は聞かないから、こういう時間が本当に楽しい。