みんなの修行を応援するために薫さんと一緒にお結びやおかずを作っていると金色の蝶が視界の端に移り込み、窓の外を見ると間近にドクトル・バタフライが佇んでいるのが見えて、ビクリと身体が跳ね上がる。
「何してるんですか、ドクトル」
「うむ、折り入って頼み事をしに来たのだよ」
「景さん、変態の言うことは聞いちゃダメよ」
「Mrs.緋村、私は
また大変な頼み事を言うのかと不安を抱きつつ、薫さんに少しだけ離れて貰ったから「話を聞くだけなら良いですよ」と切羽詰まったような雰囲気の彼の言葉に応えると、ドクトル・バタフライは安堵の息を吐いた。
薫さんに聞こえない様な声で話す。
「実は、武藤カズキと喋ってしまった…」
「……まさか、それを伝えるために?」
「いや、それもあるのだが。武藤カズキと津村斗貴子をそろそろ未来に帰してあげなければ彼らの存在がこの時代に固定されてしまう」
「パラドックスですか?」
「それに近しい現象だ」
ドクトル・バタフライは私の言葉を肯定し、武藤君と津村さんの存在を固定しないために、二人の目的を早急に完了させる必要があると教えてくれたものの。
まだ二人は強くなるために頑張っているのに、タイミングの悪さも遺伝してしまったのかと考えて、なんだか申し訳ない気持ちになる。
「それで、どうするつもりですか?」
「既に武藤カズキは蛮竜を使えるようになっているが、彼の問題なのは心にある。未来の世界を守るという重荷に不安を抱いているのだ」
「……まだ子供ですからね」
武藤君の一喜一憂を正確に捉えるドクトル・バタフライの今の姿は正直に言えばドン引きです。自分の推しの不安に寄り添えるのはファンとして当たり前……まあ、その推しが私と左之助さんの玄孫なんですけどね。
「糸色君、既に準備は終えている。蝶・ベストなタイミングで二人を送り出す瞬間を作ってくれ」
「私、ただの物書きですよ?」
「致し方ない。私がやろう」
そう言うと時逆時順みたいな妖怪を窓枠の外で連れていくドクトル・バタフライの後ろ姿に苦笑してしまう。あんなこと言っていたのに、自分で簡単に解決できるんじゃないですか。
二人と会うのが照れ臭いんですね。
「景さん、大丈夫だった?」
「えぇ、大丈夫ですよ。それよりもお米が冷める前にお結びを作りましょう。みんなもお腹を空かせているかもしれませんから」
「えぇ、そうね」
そう言って私は薫さんと一緒にお結びを作る。
ドクトル・バタフライも変に気取らずに二人と会えば分かり合えると思うけど。未来のカッコいい自分をイメージを崩す行動は取りたくないんでしょうね。