武藤君と津村さんが真夜中に帰ってしまった事を薫さん達に伝えると、まだまだ教え足りなかったと嘆く声が多く、二人のポテンシャルの高さに驚くばかりです。
しかし、ドクトル・バタフライの「私は有意義な時間を過ごせて、とても幸せだよ。ありがとう、彼らに命を紡いでくれて」と言われ、私は彼の感涙に苦笑しながら頷いていた。
本当に「武装錬金」が好きなんですね。
「カズキ達は元気にやってるかねぇ?」
「きっと大丈夫ですよ。そのためにカズキ達がいるんです。それに『太陽が素晴らしいのは塵さえも輝かせること』って言うでしょう?」
「……そうだな。アイツらがいるなら大丈夫だな」
ニヤリといつものように笑った左之助さんに私も満足し、スヤスヤと私達の間で眠っているしとりを見つめる。貴女とお腹の子が誰と夫婦になるのか。
すごく興味が出てきちゃったわね。
「ふと思ったんですけど。左之助さんも継承権を得るために時間を越えたりしたんですか?」
「いや、オレはお前を守るために強くなろうとしてたから簡単に使えたが……すまん、今のは無しにしてくれ。自分で言ってて恥ずかしいヤツだ」
「いやです♪︎」
そう言って左之助さんの肩にもたれ掛かり、ずっと私を大切に思ってくれる彼の優しさが私の太陽なんだって心の底から想える。
たまに考えてしまうけど。
もしも左之助さんに出会わなかったら、私はどうなっていたのだろう。今みたいに笑えているとは思えないけど、幸せになれてるかな。
「…くぁ……ぷへ…」
「……フフ、おはよう。しとり」
「…ぉあよ…」
こくり、こくり、と眠たげに頭を揺らすしとりは寝ぼけたまま私の身体に抱きつき、また寝息を立てようとするので台所に向かい、洗面器代わりに使っている桶に水を張り、可愛いしとりの顔を綺麗に洗ってあげる。
椅子に座らせて歯を磨き、うがい、ぼんやりとまだ眠たげな彼女を左之助さんに預けて私も同じ事を繰り返し、襷で袖を縛って割烹着を身に付けて、朝御飯の準備を開始する。昨晩の内に用意していた鱈の切り身をフライパンにオリーブオイルを敷き、じっくりと身を焼く。
その間に昨晩の内、武藤君と津村さんが帰るときに用意していた釜戸の蓋を開け、ふっくらと炊けている白米に満足し、左之助さんとしとりの分、恐らく今日も来るであろう皆さんの分を御茶碗に装っていき、昆布と鰹節を浸けて混ぜていた出汁にお水を足し、豆腐、お麩、シメジを入れ、お玉で掬ったお味噌を出汁で溶かす。
「左之助さん、味見です」
「すげえ美味い」
「…んっ……しとぉも…」
まだ眠いのか目を瞑って両手を差し出すしとりに小皿に装ったお味噌汁に息を吹きかけ、少し冷ましてから彼女の口許に近づける。
「…ぉいひ……くぅ…」
「寝るな?しとり、おい?」
左之助さんに頬っぺたを触れながら眠りに落ちようとするしとりにクスクスと笑ってしまう。ああ、まだ鱈の調理の途中だったわね。
鱈の皮の部分を下に向け、身の部分にスプーンで少しずつオリーブオイルを掛けてあげる。パリッとした食感が二人は好きみたいなので、ポワレする。
「今日も良い匂いね」
「なんやガキ等居らんのかいな」
そうこうしている間に、本条さん達も中庭からやって来るのが見えて、本当にタイミングの良い人達だなと思いながら次々とやって来る緋村一家の分も加えて、みんなの分を居間の長机に運んでいく。
「いただきます」
その言葉を皮切りにみんなも各々の言い方で言葉を呟き、私の作った朝御飯を食べる。昔なら考えられなかった、沢山の人に囲われて幸せです。