「相楽さん、電信でーす!」
「はいはい。相楽です」
「ん!しとりでる!」
トタトタと玄関先に向かう私の横を駆け抜けていき、勢いに任せて扉を押すしとりの力で危うく郵便局の人が扉とぶつかるところでした。
「ご、ごめんなさいね」
「いえ、慣れていますので」
手紙を受け取ろうとするしとりを抱っこして、私の代わりに受け取って貰う。郵便局の人も「じゃあ、よろしくね?」としとりに頼み、コクコクと頷いたしとりは左之助さんのところに走って戻る。
「父ちゃん、どーん!」
「イデェッ!?」
鈍い悲鳴が聴こえたけど。
多分、気のせいですね。印鑑を押して帰っていく郵便局の人を見送りつつ、呻き声が聴こえる居間に向かうと左之助さんが脛を押さえていた。
「どうしたんですか!?」
「し、しとりの突撃を受けたら机に当たったッ」
「……ごめんね。どーんして」
「いや、大丈夫だ。しとりの突撃は父ちゃんも嬉しいからしてくれて良い。でも危ないものや固いものがあるところで走るのは怪我するからやめような?」
「ん!分かった、走るときはきをつけう!」
フンスと胸の前で握り拳を作って力強く頷くしとりの頭を私と左之助さんは優しく撫でて「偉いわね、しとり」や「ちゃんと謝ったのも偉いぞ」と褒めてあげる。
我が家は褒めて伸ばして、悪いことはしっかりと分かるように教えてあげ、一緒に覚えるために頑張ることです。頭ごなしに怒るのは悪いことですから。
「しかし、誰からの手紙だ?」
「私も名前は見ていな……」
「ん。よめない……」
「石動のオッサンからとか初めてじゃねえか?」
「そう、ですね」
一応、祝言のときには塚山君が呼んでくれたおかげで参列してくれたけど。
まだまだ、あの人の考えが良く分からないのよね。石動雷十太の理念───殺人剣としての日本剣術の権威再建は剣客兵器の富国強兵に似ている。
「なんて書いてるんですか?」
「…………剣客兵器の奴ら、アイツを侮って重傷を負ったみたいだな。ほら、読んでみろ」
しとりが受け取ろうとする手紙を取り、膝の上に彼女を乗せたまま手紙を読んでいく。
「『山奥の修行場に無理やり押し入ってきた自らを剣客兵器と名乗る集団を打ちのめしたが、些か面妖な技を使う者もいた。我輩の弟子 由太郎と貴殿等の同心 明神弥彦の名を口にしていたため、久方振りに俗世に戻り、暫く神谷道場に在住し助力する』……剣客兵器は彼の事をどういう風に思っているんでしょう」
「少なくとも剣心が認める剣才の持ち主だ。あの時から五年間も直向きに修行していたヤツが、そこら辺の雑兵に負けるかよ」
そうなのである。
石動雷十太と言えば真空を断つ斬撃を自由に振るえる中距離に於いて無類の強さを誇り、その斬撃は避けることは並大抵の剣客では不可能に等しい。