凍座白也が姿お兄様に重い感情を向けている事に気付いてしまった私はワクワクしています。姿お兄様は
左之助さんとしとりはまだ気付いていない様子なので二人に買い物に戻ることを伝えて、私は左之助さんの袖を摘まんで呉服店に入り、ドキドキする心臓の高鳴りを静めるように胸を両手で押さえる。
「景、大丈夫か!?」
「い、いえ、少しドキドキしてしまって…」
「風邪じゃねえよな?」
「母ちゃん、だいじょぶ?」
二人が私を心配してくれる優しさに申し訳無さを感じ、素直にお兄様の恋模様にトキメキを感じていたことを伝えると、左之助さんがスンとした真顔になり、いつもより強めに頬っぺたを摘ままれる。
「いふぁいっ、いふゃいれふ!」
「オレ達の心配より恋たァ……どういうつもりだ、今回はマジで話し合いが必要だ!?」
「しとりもおこった!」
「ひぃん…!」
左之助さんとしとりに怒られ、泣きそうになりながらお腹を圧迫しないように抱き抱えられ、しとりも抱きついてきて逃げることが出来なくなってしまう。
……私が悪いですね、ごめんなさい。
「でも左之助さんこれだけは聞いて下さい」
「なんだ?」
「お兄様はお姉様になれます。そして、私とそっくりになります」
「……引き返して助けるか」
早乙女らんまと久能帯刀のふたりがいたスイカの島の時のようになってしまったら、流石の姿お姉様も大変な思いをすることでしょう。
そうなる前に、さっさと本条さんとお付き合いして、逢瀬を重ね、祝言を挙げて夫婦になってしまえばお父様とお母様も安心できます。
ふと目の前を水気を纏って跳ね舞う姿お姉様が横切り、その後を追うように快活とした笑顔の凍座白也が駆け抜けていく。どうやら姿お姉様は偶然にも打ち水を被ってしまったようですね。
「母ちゃん、はやい!」
「私じゃないわよ、しとり」
「改めて見ると髪の長さ以外は本当に瓜二つ……」
「左之助さん、今何処を見ました?」
私をお姫様抱っこする左之助さんの胸板をペチペチと叩きつつ、神速を越える縮地の速さを以て凍座白也の攻め手を回避し続ける姿お姉様はニコニコと笑っているけど。少し怒っているようにも見えますね。
「白也、僕達は友達だろう?」
「うむ!だが、姿は良い女だ!」
「ウ~ン、僕には鎌足が居るからお断りかな」
そう言うと姿お姉様は羽織を脱ぎ捨て、凍座白也に被せると同時に私では視認すら出来ない速さで何処かに消えてしまった。
「これは、売れそうですね」
「錦絵なら良いが、春画は止めてやれよ?」
「冗談です、さすがに兄の春画は書きませんよ」
まあ、夫の春画は描きますけど。