今日だけで大変な一日でした。
姿お兄様は無事に逃げ切ったのだろうかと思いつつ、寝室に戻ろうと居間の前を通り抜けようとした瞬間、ドクトル・バタフライとススハム、不破信二、奈落、転生者が何故か私達の家に集まっていました。
戸締まりは確認したんですけど。
不法侵入で通報しようかしら。
「Good Nightだ。糸色君、今日は私達に関わる大変な事態を伝えるためにやって来たのだが、少しだけ君達の家をお借りしている」
「……他の人の家じゃダメなんですか?」
そう言って居間に座っている方々に問い掛ける。
「アタシの家は山ん中だ。アンタの弱い身体じゃ気候の変わりやすい雪山で長居は出来ないだろ」
「俺の家も他人を招くには遠すぎる」
「私には家など無い」
ススハムの言い分は分かりますけど。不破信二と奈落の言葉も仕方ないですけど。ドクトル・バタフライは普通に銀成市に屋敷を持っているじゃないですか。
そう思いながらススハムの隣に腰掛ける。左之助さんとしとりが寝室で待っているので出来るだけ早く話を終らせてもらえると助かります。
「……さて、みんなが揃ったところで我々の存在に関わる緊急事態について話そう。先ず先に伝えておこう、私は新しく転生者が生まれる予兆を感じた」
成る程、今回は私は無関係です。
「その転生者の物語は知っているのか?」
「私は生憎と触れていないジャンルだ。しかし、ここには糸色君という物書きを生業とする女史がいる。彼女ならば知っている筈さ」
「アタシと鷲塚の邪魔にならないなら良い」
みんなの視線が私に集まってきた。止めてください、身重の女にプレッシャーを掛けるのは悪いことですよ。本当に怒りますよ?
「物語のタイトルは何だ。ドクトル」
「タイトルは『ゴールデンカムイ』だ」
そのタイトルを聞いた瞬間、私とススハムは頭を机に叩きつけるように突っ伏してしまった。聞きたくなかった、あんな変態や変人まみれの煌めきに染まって、ウコチャヌプコロする物語が混ざるなんて…!
「この二人の反応を見るに面倒臭い物語なのは分かったが、その転生者の性別はどっちか教えてくれ。男なら強いか確かめてみたい」
不破信二は強者を求めるように問う。
「彼女は素敵な女の子になるのだろうね。しかし、問題を挙げるとすれば理解していると思うが『特典』は願った強さに比例して悲惨な運命を辿る事になる。彼女の『特典』の一つは『お金持ちになりたい』だった」
「……やけに詳しいですね」
「筆談で聞いたからね」
この人の行動力はなんなのだろう。
ゆっくりと溜め息を吐いて、しとりとお腹の子が大きくなる頃には金塊争奪戦に巻き込まれる可能性もあるんですねと静かに呟いてしまった。
「安心したまえ、君達の子供は私が死なせはしない。大事な友人の家族は私が生き続ける限り、ずっと見守り続けるつもりだ」
「アタシの息子に監視つけてるのはお前かよ」
「それなら兄貴の子孫を宜しく頼む」
ススハムと不破信二は正反対の反応ですね。まあ、そうなるのは仕方ないかもですが、ドクトル・バタフライは有言実行する方なので不安は少ない。
「あと糸色君に言っておきたいことがある」
「なんですか?」
「ナマモノは程々にしたまえよ」
「ナマモノってなんで……あっ、頭の中に出てましたから言わなくて大丈夫です。なるほど、こういうジャンルもあるんですね」
「薮蛇だったか、失敗してしまった」
これは、衆道の進化形でしょうか?
しかし、私のトキメキはこれだったんですね。