しとりのペットになったクズリは賢かった。
明らかにしとりよりも弱そうな私にいかくすることもなく、居間の座布団の一つを根城にして丸くなって、しとりと一緒にお昼寝している。
くっ、こういうときにスマホが欲しくなります。
「景、首輪買ってきたけどよ。あのクズリの名前はどうするつもりなんだ?」
「しとりが名付けるでしょうし。私と左之助さんは変な名前になりそうだったら、それとなく名前を良いものに修正してあげれば良いんです」
「良い名前なあ……腹の子に名付ける候補も決まってはいるが景の家の仕来たりに合いそうなのが難しくてな。生まれるまでには良い名前を考えるからよ」
「フフ、楽しみですねえ…」
優しくお腹を撫でてあげる。
少しずつ大きくなってね。お母さんも元気に生きるからあなたも元気に産まれてきてくれるならお母さんは何だってするからね。
「なあ、クズリって狸だよな」
「イタチですってば」
「……いや、でもよ。あの毛並みは」
私も何度か思いましたけど。
あれはイタチですからイヌでもキツネでもありませんよ。まあ、ヒグマさえも恐れない凶暴性は何処に行ったのかと不思議に思ったりしますけど。この子は比較的に温厚な個体なのかもです。
「しかし、しとりが寝るときはコイツも来るのか」
「夜までに専用の寝床を作ってあげればクズリもそちらに移ると思いますよ?」
「寝床か」
私の言葉に悩んだように腕組みした左之助さんは納屋の方に向かって歩き出す。この借家を借りたときに付いてきていた農具で工作をする。
なんだか日曜日のお父さんですね。
しとりとクズリも大きくなる頃には東京を離れて、様々な場所に行ったりするのかな。しとりはなんだか姿お兄様みたいに冒険家になりそうだもの。
「景、犬小屋で良いのか?」
「籠を加工した方が早いですよ」
「……それもそうか。行水桶借りるぞ」
「はい、どうぞです」
しとりに抱っこされているクズリを座布団ごと行水桶に移し替えた左之助さんの行動に驚き、思わずクスクスと笑ってしまう。
でも、いきなり移したらビックリしますよ。
「……く…ぷふぅ…」
「あらあら、しとりは眠ったままですね」
行水桶の中で寝返りを打つクズリが怪我しないように座布団を敷き詰める左之助さんは私の分は残してくれ。クズリもブンブンと暴れていた尻尾が止まり、静かになったところを見るに眠っていますね。
やはり、そういうものが動物は好きなのかな?
「左之助さん、何してるんですか?」
「しとりが怪我しねえように爪切り」
確かに、大事ですね。
口の中も歯磨きしてあげましょう。