「口惜しい…!また獣の槍がッ」
「何度も言わせるな。コイツは蛮竜だ」
ドクトルの押さえつけた化け物女の身体に蛮竜を突き立て、雷撃を叩き込んで消滅させる。だが、白面の者の尾なら確実に黄泉還る筈だ。
剣心達にその事を話そうと後ろに身体を向けた瞬間、オレの身体を無数の針───いや、髪の毛が貫き、鉤状に変化した毛先がオレの首を狙って迫り来る。
「ぐっ、おらあっ!!」
「ヌゥンッ!!!」
二重の極みで一つを弾けたが残りの髪の毛を躱すことが出来ず、素っ首を刎ね飛ばされる刹那に石動雷十太の振り下ろした大刀が髪の毛を切り落とす。
「悪い。助かった」
「気にするな。我輩も物の怪と戦うのは初めてだが、よもや死して尚もお主を狙うとは。余程その大鉾を恐ろしく思っているのであろう」
「恐らく彼女は白面の者が栄養を得るために放った尾の一つだろう。今回、凍座白也と剣客兵器を狙ったのは彼らに向けられた憎しみを喰らうためだ」
「ドクトル殿、一体どうするつもりでござる?凍座と権宮、天智以外に生き残った剣客兵器は日本全土に散らばっているのでござろう」
「緋村君のQuestionに答えるのは吝かではないが、彼女の灰を海に捨て去るまで安心できないのでね。暫く待ってくれたまえ」
そう言うとドクトルは小さな球体になるまで化け物女の灰を武装錬金で丸め込み、背広のポケットに仕舞うと咳払いしてオレ達を見渡した。
ドイツもコイツも血塗れの疲労困憊だ。
「緋村剣心、相楽左之助、斎藤一、永倉新八、鷲塚慶一郎、石動雷十太、比古清十郎、糸色姿、そして雪代縁。君達には生き延びて貰わなければいけない」
「どういう意味だ。蝶髭」
「糸色景。全ては彼女を守るためだ」
「……待て、待ってくれ。なんで景の名前が出る?」
「聞き捨てならないね。髭親父が」
「もう相楽君は気づいているだろう。物事の中心には常に彼女という存在が居て、まだ奴らは気付いていないが彼女の知恵は世界を揺るがす」
その言葉の先を言おうとするドクトルに蛮竜の矛先を突きつけ、アイツの信頼を裏切った目の前の男に怒りと殺意を向ける。
しかし、ドクトルは飄々としながら宣った。
「───と、言うのは以前までの話だ。今の彼女は世界を揺るがす知恵は有れど引き出す能力を私が手術で封印した、そのおかげで多少なり延命も出来る」
「延命?左之、どういうことでござる」
「……北海道に来てから景の体調は日に日に悪くなってたんだよ。アイツは隠し事もウソも下手な癖に必死に隠してやがった。悪い日には血を吐いて……」
「まさか、沖田殿と同じ…」
ドクトルのおかげで景が助かっているのは分かる。だが、この世の物事の全てにアイツが関わっているわけがねえんだ。なにか、別の何かがアイツの知恵を狙っているとしか考えられない。