まだ完全に治っていないから左之助さんと緋村剣心には病院に行って貰っている間、私は左之助さんの身体の中に入り込んでいた髪の毛の後始末に悩む。
私の身体に飛び込もうとしてきたけど。
サンピタラカムイの神酒のおかげで身体に刺さる寸前に結界のようなものに弾かれ、今は髪の毛も加速できない小瓶の中に入っている。
やはり破戒僧の御札にも効果はあるらしく、しっかりと髪の毛は動けずに忌々しげに私の事を作り出した目で睨み付けているものの。そうする以外に何も無いため、こういうものはドクトル・バタフライに渡しておきたい。
「白面の者、あなたは何になりたいの?」
この髪の毛の向こう側に存在する世界最強の妖怪たる白面の者に伝える。彼、あるいは彼女の願った「夢」は私も知っているけど。
私では叶えてあげられない。
「いつかあなたの願いが叶うと良いわね」
コトリと小瓶を指先でなぞり、呟く。
「我を憐れむか、人間風情が」
ゆっくりと黒かった髪が白く染まり、白面の者に似た顔付きに変化し、ジロリと私を見上げる。いや、私のお腹の子供を妬んでいるような目だ。
「下らん」
そう言うと髪の毛は塵に変わり、身の毛も弥立つ悪意の気配は完全に消えてしまった。……いや、消えられると私が困るんですけど。
「母ちゃん、だれいたの?」
「あらあら、しとりも聞いていたのね。ちょっとだけ妖怪さんとお話ししていただけよ、しとりも個魔さんとお話しするでしょう?」
「ん!こまとはなすのすき!」
「嬢ちゃんに好かれて私も嬉しいよ。母者、アンタはもう少し慎重さを取り戻した方が良い、死期を感じてるのかは知らないけど」
「そう、ですね。気を付けます」
個魔の方の言葉に苦笑いを浮かべることしか出来ない。いえ、お婆ちゃんまで生きると左之助さんと約束しましたから生きるつもりではありますけど。
「ん!父ちゃん、かえってきた!」
「え?」
私の背中に張り付いていたしとりが立ち上がって玄関に向かって走り出す。そんなに聴覚は良かったかな?と考えながらしとりを追い掛けると、左之助さんが姿お兄様と本条さんと一緒に帰ってきた。
「久しぶり、景。今日は元気かい?」
「え、えぇ、元気ですけど。本条さん、これは?」
「姿が呪泉郷産のお土産を蝶のおじさんに貰ったらしいから分けてもらえるかなって」
「君のは個別で貰っているよ」
「姿のそういうところ私は大好きよ♪︎」
今は二人とも性別は男の人だから、やっぱりトキメキを感じてしまいます。左之助さんと緋村剣心にも一時ほど考えましたけど、私以外の人と笑い合う左之助さんを描くのは少しだけ悲しくなったのでもう書きませんけど。