「糸色、剣客兵器は事実上の壊滅だがお前を狙っていた理由は依然として不明のままだ。なにか思い当たる事があれば先に言っておけ」
「(ここで土方歳三は生きています、なんて言ったら死ぬ気で問い詰められそうだからドクトルに任せようかな。それに永倉さんも禿げていないからセーフです)……特には思い出せないです」
「五年経つのにまだ虚実も使えんのか貴様」
「ウソなんて吐いていないですよ?」
この人の視界には何が見えているのかしら?
むにっと片手で頬を持ち上げるように掴まれる私と斎藤一を交互に見比べ、しとりも私の身体に抱きついてきて、身動きが完全に取れなくなってしまった。
でも、しとりは可愛いので許します。
「いふぁいれふっ」
「阿呆が。相楽に頼り続けるのは構わんが、時にはアイツを守るつもりで奮起してみせろ。頼り、頼られる、お互いがお互いを認めて手助けする、夫婦とはそうやって成り立つものだ」
「めおと先生…」
「やめろ。俺にそんな眼差しを向けるな」
いつものように夫婦の講義をしてくれた斎藤一に尊敬の眼差しを送っていると照れ臭そうに煙草を取り出して、すぐに制服の内ポケットに煙草を仕舞った。
やっぱり、習慣になっているんですね。
私とお腹の子を気遣ってくれる斎藤一に感謝の気持ちを抱きながら剣客兵器の事を訪ねる。隣の部屋でしとりとドンとお手玉で遊んでいる左之助さんも一瞬だけ、こっちに視線を向けてきた。
「さっきも話したが事実上の壊滅だ。凍座白也以外の字付きの奴らも深傷を負い、現在は軍事施設の医官や町の医者を総動員して治療に当たっている」
「……そう、ですか」
「あの化け物女もそうだが近年の未解決事件の大半は妖怪の仕業と考えるべきだろう。奴らの目的は不明だが、相楽の大鉾を獣の槍と勘違いしていたぞ」
「え?いや、そんな筈は……」
蛮竜は妖刀の筈ですから、霊槍の獣の槍とは絶対に違うと思いますけど。……やはり、大陸に渡っている間に何かしら間違われる事件が起こっていたのかな。
「オレの蛮竜と獣の槍はそんなに似てるか?」
「大鉾と槍は似てないですねぇ…」
「相楽、アレが槍に見えるのか」
「鉾も槍の一種じゃねえかよ」
それは、そうですけど。
左之助さんはドンに股がったしとりを連れて、こちらにやって来て、斎藤一と私の会話に割り込み、私の肩を抱き寄せる。
……これは、まさか嫉妬ですか?
なんでしょう、この高揚感は左之助さんが私を取られないように斎藤一を睨み付けている。すごくドキドキしてしまいます。
「阿呆が。流石に今のは女々しいぞ」
「……うるせぇよ。毎回ウチの女房を狙われる旦那の辛さなんざお前には分からないだろ」
「うっ、すみません」
嫉妬じゃなくて心配してくれていたんですね。