雪代縁も加わった生活は四日目を迎えた頃。しとりとドンの散歩を引き受けてくれたり、左之助さんと組み手を行いつつ、雪代縁はホムンクルス化した雪代巴の事を探して函館を彷徨っている。
客室を使って眠っているものの。
やはり眠ることは難しいらしく、彼はいつも真夜中に居間に入り、縁側に腰掛けて月を眺めている。きっと雪代巴も自分と同じように月を見上げていると彼もそう信じているのだろう。
「雪代、お前の姉貴かもしれないヤツが現れた」
「何処だ!何処に現れた!」
「この函館だ。おそらくアイツの目的は景かお前の身体を乗っ取って何かを企んでいるかもしれねえんだ、余り派手には動けないぞ」
「分かっている。だが、姉さんが先だ」
雪代巴の事を一番に考えているけど。
やはり、まだ自己中心的に物事を進めようとする雪代縁にどうしたものかと考えてしまう。彼の頭脳なら冷静になれば無鉄砲に探し続けるより、此方の方が見つける確率は高いのに。
「(雪代巴のホムンクルス体は魂の無い抜け殻。その中に入り込んで出来ることは多いし、あの美貌なら勝手に人間は寄っていくはず……)」
そう考えると妖怪にとって雪代巴の姿形は疑似餌の見本の様に思える。───けれど。今更白面の者が人間を食べるために人の身体を奪うとは思えない。
「左之助さん、しとりと遊んで来ますね」
「ん!あそぼ!」
「おお、気を付けろよ」
雪代縁と左之助さんを残して、しとりと隣の部屋に移動すると座布団を咥えてドンも追いかけてきた。ドンもしとりが大好きなんですね。
個魔の方も頭だけ影から出して、私達のやり取りを眺めていたけど。今はしとりの背後に出て、私の事を怪訝そうに見つめている。
「アイツって敵じゃなかった?」
「そういう時期もありましたし、とても怖い思いもしましたけど。困っている人を助けないのは、しとりの教育にも悪いですから、それに……」
「どうしたのさ。母者」
「……いえ、考え事をしただけですよ。しとりは何して遊びたいですか?」
「ん!ん、んと、えとね」
遊びたいことを一生懸命に考えるしとりの可愛さに、ほっこりとしながらも差し出されたお手玉を受け取り、一つ、二つ、三つ、とま回す数を増やす。
しとりは左之助さんに似ていて、運動神経も動体視力も良いから私より多くお手玉を回せる。未来でどんなお仕事をしているのかな?と考えつつ、ドンに持っていかれたお手玉の一つを諦め、二つのお手玉を動かす。
「ん!ん!ん!」
「嬢ちゃんのほうが上手だね」
「うっ、やっぱりそうですよね」
近視な上に乱視、更に運動神経皆無の私じゃしとりのお手本になれるようなお手本遊びは出来ないですね。でも、お絵描きなら出来ますよ!