某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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妖の尾 序

頭部が切り裂けて尚もケタケタと嗤う雪代巴の身体に取り憑いた妖怪の笑い声に身体が竦み、今すぐ逃げ出したいのに腰が抜けて、ドクトル・バタフライと奈落の二人を相手に互角以上に渡り合う彼女に恐怖を抱く。

 

剣山の如く無数の針を纏った尻尾を振るって攻撃を繰り返し、ハリネズミのように逆立った尾の毛を射つ雪代巴に雪代縁は怒り、倭刀を振るって髪の毛の槍を弾き、峰に構えた倭刀を彼女の肩口に叩きつける。

 

しかし、大妖怪たる白面の者の尻尾を鋼を鍛えただけの倭刀でそう何度も切り裂く事は出来ず、尻尾を払うように薙いだ動きを受け止めた瞬間、雪代縁の身体が私の真横を通り抜け、頬や着物に血飛沫が飛ぶ。

 

「……嘲笑々(フフフ)…姉さんの皮を被った害虫が、とっとと僕の姉さんから出ていけ!!」

 

「だ、だめ…!」

 

血まみれの雪代縁が立ち上がって雪代巴に向かっていく姿に気がつけば抱きつき、彼の事を押し止めていた。そうしないと、そうしなければいけないと直感的に思った刹那、地面から尻尾が突き上げる。

 

「相楽君、糸色君を連れて下がりたまえ!」

 

「本気でやるぞ、蝶野!!」

 

「今はドクトル・バタフライだよ!!」

 

押し倒した衝撃で気を失った雪代縁と私を抱き上げた左之助さんは「すまねえ、もっと用心して家に残していけば良かった」と謝ってくれる。

 

ズキリと頭が痛み、視界がボヤける。

 

ドクトル・バタフライに制限を付けて貰った筈の「特典」が制限を越えようとしてるの?と頭を押さえたその時、目の前に雪代巴の顔があった。

 

「ヒッ!?」

 

「良いなあ、良いなあ」

 

「景に近寄ってんじゃねえ!」

 

左之助さんは雪代縁を放り投げ、私を抱き締めて蛮竜を振るって雪代巴を退け、金色の蝶が私達の姿を隠して逃げる道を作ってく───ッ!!

 

「左之助さん、後ろに跳んで下さい!」

 

私が叫ぶと同時に左之助さんが大きく後ろに跳んだ後、さっきまで私達のいた場所に無数の髪の毛の槍は地面に突き刺さっていく。

 

すごい、私、未来が見えてるんだ。

 

ドクトル・バタフライが武装錬金を使って抑圧してくれていた「特典」が恐怖心による負荷で無理やり再起動した結果。一時的に私の視界に映り込んだモノの情報がダイレクトに流れ込んで来ているんだ。

 

「右に三歩!前に五歩、そこから左に逸れて、走って下さい!五秒後に右に進んで、今です!そのまま蛮竜を橇にして斜面を滑って…ゲホッ!…」

 

「おい、血が出てるぞッ!大丈夫か!?」

 

「ゴホッ、けほッ…だい、大丈夫です」

 

雪代巴の追ってこれない安全圏まで左之助さんを誘導していく度に頭が痛み、鼻血が溢れ、耳鳴りが聞こえ、視界がボヤけ始める。

 

「ストップです!」

 

そう言うと左之助さんが立ち止まった瞬間、木々を突き破って現れた雪代巴が泥濘で滑り、急斜面の坂を転がり落ちていく。

 

一先ず、これで……あっ、だめ、だ、これ……?……

 

 

 

 

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