両目を覆うように包帯を巻いて、一時的に視界情報を遮断して貰った私はドクトル・バタフライの所持する核鉄の山と羽毛を詰め込んだ敷き布団の上に寝かされ、この安静状態を維持するために明治時代に似つかわしくない呼吸器を着けている。
ピッ、ピッ、ピッ、と私のか細い心音を伝える心電図の音を聴く。一定のリズムを聴いていると落ち着くけど。目を開けて見えないのは不安になる。
お腹の子はサンピタラカムイの神酒のおかげで安全に産まれて来ると御本神様に聴いているので安心することは出来るけど。
左之助さんとしとりに会いたい。
「景、大丈夫…じゃねえよな」
「……へーきですよぉ…ちゃんと、生きてます…」
左之助さんの声が聴こえる。
ドクトル・バタフライが呼んでくれたのかと彼に感謝しながら、私の右手を握り締めてくれる左之助さんの手の感触がいつもよりハッキリと分かる。
「Good Morningとは言いがたいが全員分の朝食を用意した。相楽君、彼女に配膳するのは君に任せるよ。熱いから気を付けたまえ」
仄かに漂うパンを牛乳や砂糖を加えて煮込んだお粥の香りを嗅いで少しだけ食欲が沸いてくる。お米よりパンの方が栄養価も高く、お粥やリゾット状にすることで弱った身体に適した食事ではあるけど。
両目を隠して食べるのは罰ゲームなのでは?
「……景、触るぞ」
「え?は、はい、どうぞ」
突然の言葉に驚きながらも左之助さんに呼吸器を外して貰い、ゆっくりと上半身を起こして貰う。何故か咳払いする声も聴こえるものの。
今は見えないので分かりませんね。
「口開け、いや、熱いか?」
「んっ、ちょうどいいれふっ」
木製のスプーンが唇に当たり、ゆっくりと口の中に広がるパンの甘さと煮込まれた牛乳の暖かさに、ほうっと吐息を吐いて、左之助さんの呼び掛けに答えながらパンのお粥を食べさせて貰う。
あれ?看病して貰っているのに、いつもと変わらない気持ちになるような、いえ、まさか、そんな、いつも私は左之助さんに看病して貰っている?
……それはそれで愛されているということなのかな?
「も、もう、いいです」
「まだ半分も食ってないぞ?」
「お腹いっぱいです」
「眠る前に歯磨きするか」
そんな長編小説「物語」シリーズの主人公のように人の歯磨きをやろうとするのは破廉恥だと思います。でも、いつも以上に愛されていると分かるので今回は嬉しい。
怖くて恐くて仕方なかったですけど。
左之助さんが守ってくれるので安心できます。そして、今更ながら思うのは未来予測でピンチを乗り切るのって主人公の覚醒シーンに似ている気がする。
まあ、私は物語の主人公じゃないですけど。