雪代巴の目撃情報は函館を中心に増えている。
おそらく私か雪代縁の事を探し、人を襲い、その姿を目撃した話が広まっている。噂は彼女に強さを与えて、このままだと身体を取り返すどころじゃなくなる。
それに私に戦う力はなく見つかれば簡単に捕まり、身体を奪われるか乗っ取られる可能性もあるため、奈落が身体を別けて作った白童子が護衛になった。
「吾の事は気にするな」
「そう言われても気になりますよ」
しとりもこの世の者とは思えない妖艶な白童子の姿にビックリして、私に張り付いて警戒している。確かに、美しすぎるものは時として恐怖にもなりますけど。
この警戒心の強さは良いことです。
「それにしても、その薙刀って」
「うむ、雷撃刃じゃでな」
嗚呼、やっぱり雷獣兄弟の飛天の所持していた雷撃を纏った矛で合ってるんだ。……いや、なんで雷撃刃を白童子が持っているんですか?
「ちなみに拾い物だ。奪ってない」
奈落は武器収集家なのかと考えるものの、武器の鑑定なんて私には出来ないので雷撃刃を抱えて宙に寝転んでいる白童子の姿を見上げつつ、しとりの背中を優しく撫でて落ち着かせてあげる。
「母ちゃん、あれきらい」
「雷が怖いの?」
「……ん…ごろごろ、やだ」
ギュッと私の首元に顔を埋めるしとりを可愛いと思いながらも白童子に「しとりがいるときは雷撃刃を仕舞ってもらえますか?」とお願いする。
白童子は一瞬だけ困惑したが、すぐにしとりの姿に気付いて雷撃刃を消した。妖怪特有の謎の空間に手を入れるところを見てしまったけど。
アレは何なんでしょうか、ほんとうに。
「しとり、雷撃刃は仕舞ったぞ」
「…しろちゃん、やだ」
「ムッ。この姿は吾の弟なのだがな」
「フフ、大丈夫よ。白童子は怖くないわよ、ちょっと目に光がなくて不敵な笑みは似合っているけど。怖い妖怪じゃないから安心して……安心していいのかしら?」
「少なくとも吾の主食は人ではない」
「妖怪基準の発言は止めて下さいね」
「母者、嬢ちゃんはアンタを取られないかと不安になっているるんだよ」
いきなり顔だけ出してきた個魔の方に驚きながらもしとりの本心を聞かされ、ぎゅうっとしとりの事を抱き締めながら「私の一番大好きなのはしとりですよ、貴女がいてくれるから私は幸せなんです」と伝える。
私の身体が弱いから寂しい思いをさせてしまってごめんなさい。でも、お腹の子が生まれたらしとりはお姉ちゃんになって、しとりもこの子と一緒に仲良くすくすくと成長してほしいです。