雪代縁の傷は核鉄の治癒能力とドクトル・バタフライの手術によって完治したものの、未だに彼は自分の姉を傷付けてしまった現実に塞ぎ込み、どうすれば良かったのかと苦しんでいる。
私に出来ることは料理を作って扉越しに話し掛ける事だけ。「彼」も家族を分身元の奈落によって亡くしているため、雪代縁の辛さを理解する事は出来るのでしょうが、私に出来ることはあるのだろうか。
「景、裏口の鍵が開いていたけど。不用心すぎて、兄さんは心配だよ」
「私は平然と妹の家に入る姿に驚きなんだけど?」
「え?あ、姿お兄様…」
いつの間にか家の中に入ってきていた姿お兄様と本条さんに驚きつつ、私の太股に頭を乗せてお昼寝しているしとりの頭をドンの事を枕代わりにする。
もう我が家のドンは「クレヨンしんちゃん」のシロちゃんみたいな立場になっているような気がしますね。それだけ仲良くなれたということですけど。
「姿お兄様、相談があるのですが」
「ダメだ。あの白髪の彼を手助けして欲しいというお願いは大切な妹のお願いでも聞けない。その優しさは君の美点ではあるけど、時として優しさは人を傷付けてしまうこともあるんだ」
「景ちゃんの優しいところは好きだけど。今回は私も姿に同意見よ、余り他人に優しさを振り撒いて、乗り越えるべき壁を見失わせてはいけないわ」
……二人の言葉は正しい。
私の心配する素振りや態度は雪代縁に不安を押し付け、彼の自立する想いを惑わせ、立ち直る機会を奪い取ろうとしていることに等しいものだ。
「それに男っていうのは傷付いても必ず立ち上がるんだ。それが自分の大切な物を取り戻すときならば、何百、何千、どれだけ倒れようとね」
「あら、乙女も時には奮い立つわよ?」
そう言って笑う姿お兄様と本条さんの自信に満ちた言葉にクスリと笑ってしまった。うん、そうですね。緋村剣心も同じように立ち上がったんだから、雪代縁が立ち直れないなんて道理はありませんものね。
「姿お兄様、それなら別のお願いがあるんです」
「なんだい?」
「刀を、雪代さんに刀を一振り貰えませんか?」
「……ハハ、それならお安いご用だ。とっておきの業物を彼に贈ってあげようじゃないか。……と、そうだった。伝えることがあって今日は来たんだった」
本条さんと一緒に帰ろうとしていた姿お兄様は何かを思い出したように振り返って、二人揃って左手を掲げて見せてきた。
一瞬、分からなかったけど。
二人の薬指にキラリと光る銀色の指輪に目を見開き、アワアワとしながら二人の事を何度も交互に見比べ、嬉しさの余り叫びそうになってしまう。
「今日、洋式の結婚を済ませてきたんだ。神事の祝言を挙げるときは信州でしようと思うから、左之助君にも伝えておいてくれ」
「フフフ、これから
「本条さん、いえ、これからは鎌足お義姉様と…!」
「勿論よ、景ちゃん♪︎」
み、みんなに教えてあげなくちゃです!