某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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所縁を断つ 序

姿お兄様と鎌足お義姉様の夫婦になった話を聞いて数日ほど経過し、十本以上の太刀を刀袋に包んで持ってきてくれた二人を函館山の麓に建つドクトル・バタフライの研究所に案内し、ドクトル・バタフライには事前に伝えていたため、雪代縁を研究所の外に連れ出してくれた。

 

「…何の用だ、糸色景…」

 

「今回は僕の用件だよ、雪代縁」

 

私を睨み付ける雪代縁の視線を誘導するように応えた姿お兄様に「ありがとうございます、お兄様」とお礼を言いつつ、左之助さんとしとりと鎌足お義姉様の控える場所に私も移動する。

 

「あの夜の出来事は痛ましいと思うけど。いつまで俯いているつもりだい?君の姉の身体を奪った妖怪は今も尚、人を襲っているというのに」

 

「お前に、お前に何が分かる!?自分の姉を殺され、その仇さえも間違っていた挙げ句、今度は静かに眠る姉の身体を奪われた俺の気持ちがッ!!」

 

「そんなもの分かりたくないね」

 

ズバズバと雪代縁のトラウマを抉るお兄様の言葉に不安を抱き、止めるべきかと悩む私の肩を軽く叩いて笑みを浮かべる鎌足お義姉様を不安げに見上げる。

 

……そうですね、お兄様なら大丈夫です。

 

「なら、どうすれば良かった?姉さんが愛してしまった抜刀斎を仇と見定め、それさえも間違っていた俺が姉さんに出来ることなんてもう無いんだ!!」

 

「ある。君に出来る唯一の事、それは姉の骸を取り返し、今度こそ安らげるように肉体を浄め、二度と操られないように埋葬してあげるんだ」

 

「…………どう、すればいい?」

 

「刀を取れ。その為に僕は此処に来た」

 

そう言うと姿お兄様は七本の刀を刀袋から取り出した瞬間、私の隣からドクンッ……!!と蛮竜の脈動する音が聴こえてきた。

 

まさか、あの刀達は蛮竜の転生者の?

 

「───ある戦国時代に馬鹿みたいに強く、この世の何よりも戦う事を愛していた大鉾の遣い手がいた。ソイツは自分の強さに見合う武具を持っていたが、仲間のために妖怪の刀鍛冶に武器を依頼する事もあったそうだ」

 

それは刀々斎という名前の刀鍛冶ですねと教えたい気持ちを押さえながら刀の柄のみを突き出す姿お兄様に、雪代縁の視線が一振りの刀に集まる。

 

「……景、オレの後ろに下がってろ」

 

「は、はい、しとりもおいで」

 

「ん!」

 

「ちょーっと選んだヤツが危ない感じ?」

 

雪代縁の身の丈に迫る白塗鞘の太刀。

 

どこか既視感を感じる見た目のソレに言い様のない不安を抱きつつ、スラリと引き抜かれた刀身を見た瞬間、ヒュッ……と乾いた冷たい息を吸ってしまう。

 

「妖刀、裏正……!?」

 

私が描いた訳じゃないから世界が繋がることは無いですけど。なんてものを蛮竜の転生者の方は頼んでいるんですか!?妖怪の刀鍛冶って刀々斎じゃなくて灰刃坊の方じゃないですか!?

 

蛮竜の転生者、馬鹿なんですか!?

 

 

 

 




【概要用語解説】

本作に登場する単語や転生者に関する用語を少しずつ解説してきます。

【裏正】

蛮竜の転生者の遺品。
「彼」本人は大鉾の遣い手として戦場や妖怪退治を繰り返していたものの、大事な仲間のために妖怪の刀鍛冶「灰刃坊」の工房を訪ね、幾つかの妖刀や妖槍を依頼していた。

その一振りが、この『裏正』である。

灰刃坊をして最高傑作と呼ぶ人間の怨念を宿した刀身の禍々しさは恐ろしく、そして妖しげな美しさを兼ね備えた物と「彼」は気に入っていた。元ネタは「侍戦隊シンケンジャー」に登場する腑破十臓の妖刀────。

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