斎藤一の刀は妖刀「竜王」に決まった。彼の大妖怪「竜骨精」の牙を材料として幾度となく鍛えた刀身は打刀と太刀の中間の長さだ。
背の高い斎藤一にとっては普通の打刀のように扱えるけど。私からすると太刀か大太刀にしか見えない刀を左腰の刀帯に佩いている。
未だに禍々しい気配を発しているけど。
私は巫女でも僧侶でもないですから、あなたをお祓いして浄めることは出来ません。まあ、お父様なら霊能者としても有名ですから可能だろうか。
「糸色、お前の兄に伝えておけ。集めるのは勝手だが、こんな五月蝿い刀を倉に仕舞っていたら近所迷惑になるから止めろ」
「は、はあ、分かりました」
そう言うとガタガタと暴れる竜王の柄を掴んだ斎藤一はドクトル・バタフライの研究所を出ていき、煙草を取り出すとマッチを箱の側面に擦り付けた。
私とお腹の子を案じて喫煙を控えてくれるのは嬉しいですけど。そんなに喫煙していて奥様に怒られないのかすごく気になる。
密かに、めおと先生と尊敬し、彼の話す夫婦間での在り方や重要なポイントにはいつもお世話になり、私も左之助さんも納得できるものばかりです。
「景、斎藤がどうかしたのか?」
「あ、左之助さんも用事は終わったんですね。斎藤さんを見ていたのは、夫婦間の大切な事を教えてくれる先生なので拝めば、もっと恩恵を貰えるかな?と思って」
「確かにアイツの話はタメになるな」
「ですから。こうして拝んでいるんです」
「そうなのか」
いつか薫さん達の様に家族ぐるみの付き合いが出来るようになったらいいなとは思うものの、斎藤一が素直に応じてくれるだろうか。
……よくよく考えると祝言の時も私の護衛の時も公私を分けてお友達になってくれていた気もしなくはないですが、私の記憶にあるのはお肉を取り合う斎藤一と緋村剣心、お酒を飲み比べる斎藤一と左之助さんだ。
「(意外とお茶目なのかな?)」
「多分、お前の考えは違うと思うぞ?」
「……やはり、さとりが取り憑いて?」
「自分の女房だぞ。考え事ぐらい分かる」
私の夫が世界で一番かっこいいのでは?
「ほら、しとりが待ってるから帰ろうぜ」
「はい、そうでしたね」
彼の差し出す右手を左手で握り、のんびりと研究所の外に出ていくとき、ふと研究所を見上げると雪代縁が静かに私達を見下ろしていた。
五年前に会ったときは恐ろしい人。でも、今はお姉さんのために怨嗟を乗り越えようと必死に前を向き、歩き出そうとしている人だ。
いつか、彼も報われる日が来ると良いのですが……。