私はドクトル・バタフライの提案した囮作戦に参加することになった。囮として、そこは妥協すれば我慢できますけど。旭川にいる光覇明宗の僧侶の施した独鈷結界の法力を借り、私は一応の安全は保証されている。
ただ、やはり怖いものは怖いのです。
「こんな山奥に一人で危ないですよ」
「……危ないのは貴女ですよ、雪代巴さん」
「ともえ?……ああ、そうだったわね」
ギョロリと目の動きが変わり、ザワザワと木々が揺れ、彼女の髪の毛が逆立っていく。思わず、後退りして結界の外に出てしまいそうになるのを何とか堪えて、目の前にいる雪代巴の事を見つめる。
緩やかな動きで動けない私に近付いてきた彼女の手が私から5メートル付近に届いた瞬間、強烈な雷撃と共に彼女の手が焼き焦げ、突風が私の身体を押し飛ばす。
「いっ、きゃあっ!?」
「っと…!」
でも、私は地面に落ちることなく柔らかなものに押し上げられ、左之助さんの腕の中に収まった。なにが私の身体を押し上げたのだろうかと地面を見るとクズリのドンが、ブンブンと尻尾を振り、しとりの待つ研究所へと帰っていく姿を見てしまった。
あの子、やっぱり妖怪か転生者なのでは?
そう思わずにはいられないほどにドンの行動はその時に適した事を取ることが多い。……まあ、きっと私の気のせいなのでしょうけど。
「やはり糸色君を狙ってきたか。左之助君、彼女を安全なところまで運んであげなさい」
「分かってるよ。景、このまま連れていくぞ」
「は、はい」
蛮竜を突き立てて私を木々の間に連れていき、さっき吹き飛ばされたときに外れた独鈷を差し出してくれた。地面に突き刺せばいいのかな?
「獣の槍ィ…!」
「また、それか」
嫌そうに雪代巴の言葉に舌打ちする左之助さん。ちょっと怖かったけど、それでもかっこいい……いや、最初からかっこいいのは知っていますけど。
「姉さんを返して貰うぞ!!」
そう言って駆け出す雪代縁に続くようにドクトル・バタフライ達も走り出し、雪代巴の身体を乗っ取った白面の者の尾に斬りかかる。
しかし、彼女の身体に刃が到達する前に大きく長い白い尾が彼らの刀を受け止め、拮抗し、凄まじい力で大の男の人を一撃で薙ぎ払った。
「うおらっ!!」
───その刹那、左之助さんの振るう蛮竜が白い尾を受け止め、そのまま強固な白毛に包まれていた骨肉を切り裂き、尾の先を切り落とした。
「ぎぃいっ!?」
「今度は此方の番だぜ、白面の者。オレの女房を狙った報い、その身で受けるか、さっさとその身体から飛び出て逃げるか選びなァ!!」
左之助さんの力強い言葉が響く。
やっぱり、かっこいい……。