あれから数日ほど経った頃。
ホムンクルスとして生まれ変わった雪代巴の身体に刻まれていた章印をドクトル・バタフライの武装錬金が貫き、塵となって消える彼女の遺灰を骨壺に納め、雪代縁は旅立った。
今まで復讐という目的のために傷付け、殺してしまった人達に償いと今度は自分自身の生きる道を探すために世界中を雪代巴の遺灰と巡るそうだ。
彼の行く末を見守ることは出来ませんが、どうか彼も緋村剣心のように立ち直り、いつか幸せになってくれると良いんですけど。
「また外国に行ったときに出会えるかもな」
「……そう、ですね」
左之助さんの言葉に頷き、ドンと遊んでいるしとりの事を眺める。まだ東京に戻るの早そうですし、なによりドクトル・バタフライに「ゴールデンカムイの対策がまだ終わっていないから、まだ東京に帰るのは待ってくれないか」と言われています。
「母ちゃん、ドンがふえたー!」
「ドンは増えないわよ?」
「いや、でも増えてねえか?」
そう言って目元を擦る左之助さんとしとりの言葉に戸惑いながらも目を凝らすと確かにドンの側にクズリが増えていた。
ただ、ドンよりも小さく見える。
「(まさか産んだの!?)」
確かに直立したらしとりよりも大きいから大人になっているとは思っていたけど。まさか子供が……いや、ドンの子供じゃないわね。
ドクトル・バタフライの予防接種を受けるときに一匹狼ならぬ一匹クズリとして生きてきた知性の高い特殊な個体だと言っていたもの。
「父ちゃん、かっていーい?」
「あ、あー、ドンは良いのか?」
ドンと一緒に小さなクズリっぽいのを抱き上げる個魔の方はしとりの事を見下ろして、どこか面白いものを見るように笑っている。
まさか、そっちは妖怪なのでしょうか?
「母者、コイツは飼って大丈夫だ。ただ、アンタは余り近寄らない方が良いかも知れねえが、嬢ちゃんとドンがしっかりと手綱を握るはずさ」
「……ドンもその子も一緒にお世話できる?」
「ん!ん!がんばる!」
「良いのか、景。二匹とも浮いてるところからして妖怪の姉ちゃんが掴まえてるのは分かるが、ドンみたいに賢いのかも分からねえぞ」
「きっと、先住のドンが教えてくれますよ」
そう言って私はドンに笑顔を向けると鼻を鳴らして丸まり、地面に着地してしとりの足元に移動した。やっぱり妖怪でも不思議じゃないですね。
「母者も父者も心配するな。もしものときは私も対処に回るし、悪さしたらしっかりと躾けるように嬢ちゃんにも言い聞かせる」
それなら、きっと大丈夫ですね。
「ちなみにコイツはすねこすりだ」
「妖怪じゃないですか!?」
思わず、ビックリして声を上げてしまった。