最近の左之助さんは少しだけ変だと思う。
たまに私の手首や足を見つめてきたり、何かを考え込んでいたりと悩んでいたりと、いつもより抱擁や頭を撫でるなどスキンシップも多く感じる。
「左之助さん、どうしちゃったのかな…」
「父ちゃん、へんなの?」
「うぅん、お父さんはお仕事で少し疲れてるだけよ。しとりも肩叩きや挨拶をしっかりして、お父さんにありがとうって伝えようね」
「ん!がんばる!!」
フンスと小さくて可愛い手を握り締めて、力こぶを作っているつもりのしとりの頭をヨシヨシと撫でてあげる。でも、やっぱり左之助さんの変化にしとりも気付いている。個魔の方は何も言わないけど。
多分、彼女は何かに気付いている。
「景、しとり、帰ったぞ」
「父ちゃん!」
ピョンと私の膝の上を降りたしとりはドンと親分、個魔の方を連れて玄関で靴を脱いでいる左之助さんに飛び付いて、そのまま左之助さんに抱っこされる。
二人のやり取りを眺めていると左之助さんが片手を広げて、私に向かって笑う。少し恥ずかしいけど、ゆっくりと彼の腕の中に収まり、しとりと一緒に彼の事を優しく抱き締める。
ふと変わった臭いが左之助さんから漂う。
「(香水?いえ、違う……なんだろう)」
「どうしたんだ、景?」
「……ねえ、左之助さん。私の事を愛しているなら、ここで接吻してくれますか?」
「お、おう、しとりが見てるが……」
ゆっくりと左之助さんの唇が私の唇に重なろうとした瞬間、左之助さんは自分の顔に向かって拳を振り抜き、ビックリして体勢を崩すしとりを慌てて抱き受け止め、玄関の扉を突き破りながら自分の顔に膝蹴りを放ち、外に転がっていく左之助さんを追う。
「……テメェ…ッ、なに人様の身体で好き勝手してやがるんだ…!」
「流石は母者だよ。私でも気付くのに時間が掛かる相手を、あんな手段で見つけるなんてね。けど、今後は控えた方が良いよ。しかし、よりによって血袴か。白面の者は本当に母者を欲しがってるみたいだね」
「どうにか出来ますか、個魔の方!」
血涙を流しながら自分の身体を押さえつけ、二重の極みを自分の身体に向かって撃つ左之助さんを助けるために、個魔の方に問いかける。
「すねこすり、父者の危機だ。アンタの力で中のヤツを転がせ、そうしないとこの温かな生活も人の温もりも感じられなくなるよ」
そう個魔の方が呟いた瞬間、しとりの足元にいたすねこすりの親分は体毛を逆立て、左之助さんの足元を高速で駆け回り、何度も彼の身体を震わせ、口から飛び出してきた一つ目の妖怪を噛み砕いた。
「ゴホッ、ゴホッ!あの野郎、オレが動けないのを良いことに景の身体をベタベタと触りやがって……景、さっきは悪かったな」
「いえ、あの、接吻しなくて良いで、んんッ」
「おー!」
しとりが見ているのに……でも、左之助さんが無事で良かったです。やっぱり最近の違和感は妖怪に取り憑かれていたからなんですね。