「情けねえ…あんな妖怪に取り憑かれて…」
「全くだな。この阿呆が」
「ま、まあまあ、左之助さんは白面の者の一尾との戦いで受けた傷と私の事もありましたから、そんなに責めないで下さい」
「一番の阿呆はお前だ、糸色。無闇矢鱈に隙を晒しているから白面の者に付け狙われるのだ。そもそもお前の知恵と才覚は妖怪も目を付けていると言われただろう」
「す、すみません……」
そう言って私と左之助さんにお説教をする斎藤一の左腰に佩いてある刀がカタカタと震えて、今にも飛び出しそうになっているけど。
斎藤一が柄を握っているため飛び出すことはない。
「チッ。貴様も一々口出しするな。時を超えるなぞという不可能な事を言われたところで信用できるか。……全く、刀なら刀らしく黙っていろ、阿呆が」
「(……斎藤さん、普通に竜骨精と話してますね。犬の大将と互角に渡り合った大妖怪であり、竜の王を名乗る妖刀をあんな風に扱えるのは斎藤さんだけですよ)」
あの大妖怪を力で捩じ伏せる斎藤一の胆力の凄さに苦笑いを向けつつ、少し気になる事を言っていた。斎藤一を介して竜骨精は「時を超える」という言葉を何故か左之助さんに伝えた。
なにか意味があるのだろうか。
「斎藤さん、もっと詳しく教えて貰えますか?」
「世迷い言を信じる気か」
「景、別に聞かなくても良いだろ」
「……チッ。相楽の持つ蛮竜は数百年間もの激動を駆け抜けてきた業物だが、その真価を発揮する大鉾の切れ味は全盛期の足元にも及ばぬ。───だ、そうだ」
竜骨精の言葉を信じるなら左之助さんの振るっていた今までの蛮竜は力をセーブされた状態だったということになる。でも、それなら白面の者の尾の一つがあれ程警戒していた理由も理解できる。
妖気を断つ大鉾。
その刃は獣の槍に遜色無く戦国時代に生まれた事を考えると比較的に新しく様々な特性を持っている可能性も否定できない。あの青白い雷撃を纏った姿、あれも恐らく蛮竜の本来の力の一部だとすれば───。
未来の子供達を手助けする事が出来る。
「竜骨精様、本当に時を超える事が出来ますか?」
「出来ると言っている。だが、こんな妖怪の戯言を信じるつもりか?お前は思慮深く臆病で不安を抱きやすく嘘もまともに吐けん女だろう」
「…怖いですよ、今だって怖くて吐きそうで、逃げ出したいです。それでも竜骨精様が話すという事は白面の者を打ち倒すために必要な事で、これはきっと未来の賛さん達やカズキ君達に繋がって行くんです」
それに、なんとなく分かってきました。
私に「物語」を繋げる力が宿った理由が───。