草履より走りやすいのか。
日暮かごめに長靴を貰ったしとりは楽しそうにドンと親分と一緒に野原を駆け回っている。私も魔除けの矢じりを貰ってしまったけど。
お返し出来るものを持っていない。あるとすれば左之助さんの錦絵とか、そういうものばかり。まあ、こういうものには興味ないお年頃かも知れないわね。
「犬夜叉、二人は安全だから威嚇しないでね」
「威嚇してねえよ」
「(……でも、私に唸るんですよね…)」
グルグルと低い唸り声を出す犬夜叉にショックを受けつつ、左之助さんの後ろに回り込み、その私の後ろに回り込んで同じように犬夜叉の事を見つめる。
「ウチの女房と子供を怖がらせるなよ」
「……ケッ。女子供を虐める趣味はねえよ」
「左之助さん、やはり刀々斎様ではなく蛮竜を鍛えた灰刃坊という妖怪の刀鍛冶で良いのでしょうか?」
「いや、まずは景の言っていた刀鍛冶だ。そこの犬夜叉が案内してくれるってよ」
意外と仲良くしていたんですね。そう聞きたい気持ちをグッと我慢して、左之助さんとしとり達と一緒に犬夜叉の後ろを追うように歩く。
しかし、刀々斎の工房まで何里あるんでしょうか。私は体力的に無事に辿り着けるのかも怪しいので、親分にはお世話になりそうです。
「そういや弥勒達はどうしたんだ?」
「楓おばあちゃんのところで話しているんじゃない?またあの人が持ってきた良く分からないもので弥勒様が大変なことになってるし」
「ウゲッ、またかよ」
あの人、アイツ。
やはり、蛮竜の転生者は犬夜叉達と交流を深めていたわけですね。でも、なんで刀々斎ではなく灰刃坊に蛮竜の鍛え直しを、そもそも本当に蛮竜を鍛え直したのは灰刃坊なのかも不明な状況ではある。
なにより戦国時代に到着すると同時に砕け、折れた蛮竜が妖気を吸っている理由も分かっていない。それに今の犬夜叉がどのくらい進んでいるのかも分からない。
……分からない事だらけですね。
「で、そっちの混ざり女は」
「混ざり女じゃなくて、景さんよ」
「……女、なんでお前から奈落の臭いがしやがる」
「ウソも偽りもなく言うなら、私達と犬夜叉様の言う奈落は別人です。彼は奈落の様に陰湿陰険陰鬱の初恋拗らせストーカー変態妖怪ではありませんから」
「ストーカー、え!?……貴女もそうなの?」
「時代は異なりますが、そうですね」
「景、すとぉかあってなんだ?」
「自分の恋心を暴走させて、相手の全てを知ろうとする変態さんです。お風呂を覗いたり、下着を盗んだり、写真をこっそりと取ったりする悪い人です」
「じゃあ、オレの春画を描くお前は」
「左之助さんの妻ですね」
フンスと胸を張って主張する。
私はストーカーではありません。
愛する夫の良さを世間の奥様に見せつけているだけです。知っているんですよ、たまに漁場で逢瀬のお誘いを求められているのを!まあ、しっかりと断っているのも知っているので何も言いませんけど。