私の指先を少し切って、本当に血を数滴ほど取った灰刃坊と左之助さんの歯を引き抜いた刀々斎様の師弟によって行われる蛮竜の鍛え直しを見つめる。
原作ではお互いを嫌っていた筈なのに、これも蛮竜の転生者が成し遂げた事の一つなのだろうか。そう考えると彼は物凄い人なのかも知れないですけど。
左之助さんの欠けた犬歯はどうしよう。
血は止まっていますけど。
刀々斎様が使う前に私も左之助さんの抜けた歯を貰いたいと思ってしまった。私も実は自覚していないだけで、すごく左之助さんに依存しているのかな。
「景、まだ痛てえ」
「父ちゃん、よしよし」
「ありがとなー、しとり」
抜けた歯の場所を舐めようとする左之助さんに膝枕をしながら炎を吐いて砕けた蛮竜を溶かして固める工程を繰り返す二人を眺めていると、私の血が赤熱化した刀身に落とされ、ドクンッ!!と蛮竜が激しく鳴動した。
「臭いが変わったな」
「そうなの?」
「ああ、蛮竜がそこの女と赤鉢巻きの臭いに近付いてきた。やい、刀々斎。てめえ、オレのときは
「歯はお前と同じつなぎだよ。血はソイツの身体に宿っとる神酒の気を宿すためだ。かなり古い神の加護を受けとるソイツの血は破邪の力を持っている」
私の血に変な設定を追加するのは止めて下さい。そりゃあ元禄から続く霊媒師の家系ですけど、私は霊能力というものは使えませんよ。
日暮さん達も珍しいものを見るように私を見つめるのは止めて下さい。刀々斎様の言うような力は私の血には……まあ、神酒は少しだけ飲みましたけど。
すごい能力があるわけじゃないんです。
「母ちゃん、すごいのー?」
「すごくないですよぉ?」
左之助さんの頭の上に登って私の方に移ってきたしとりを受け止める。しとりはお父さんが膝の上で寝転んでいても構わずに来るんですね。
「しとりちゃんは元気だね」
「もっと年上だったなら…」
「法師様、流石に止めときな」
「まだ何も言っていないのですが」
珊瑚さんと弥勒様のやり取りを聴きつつ、緩やかに持ち上げられた刀身の真っ赤に燃える蛮竜を見上げる。あれだけ粉々に砕けていた部分も綺麗に整い、どこか前の蛮竜よりも強く見える。
しかし、裏正を鍛えた灰刃坊と共に刀々斎様が一緒に大鉾を鍛えている光景は不思議ですね。……今、ここで聴いたら怒るのだろうか。
今は左之助さんの蛮竜が鍛え直されるのを待っておきましょう。裏正の事も竜王の事も後で聞けば良いことですし、のんびりと刀鍛冶の鍛造を見つめる方が良いです。しとりの将来なりたいものに刀鍛冶が増えるかもしれませんからね。