「神無さん、おはようございます」
「…………」
緩やかに上半身を起こした神無の傍に座り、彼女の目元につきたゴミを優しく濡れた手拭いで拭き取り、彼女と一緒の布団で眠っているしとりのお腹を優しくポンポンと触って「しとりも起きましょう?」と話しかける。
「ん…んむぅ…」
「フフ、お寝坊さんね」
しとりにも同じように顔を拭いてあげ、二人の頭を優しく撫でてあげる。たまに、じっとりとした視線を神無から感じるけど。
多分、気のせいだと思う。
「朝御飯は出来ているから食べましょう?」
そう言ってしとりと神無に山菜をお米と混ぜて作ったお味噌のお粥を差し出す。やはり「もののけ姫」に登場するジコ坊さんのお粥って憧れますよね。
……ただ、今日も左之助さんは朝早くに灰刃坊と刀々斎様に蛮竜の使い方を聞きに行ってしまい、私は楓様と一緒に薬草を摘み、巫女のお仕事を手伝う。
「景殿、此方を着てみてくれ」
「巫女装束、ですか?」
「うむ、いつまでお主達が滞在するのかは分からないが巫女の仕事を手伝う間だけ、この装束に袖を通しておいてもらえるか?」
「……分かりました」
「ん!しとりもほしい!」
「おや。じゃあ、わしのお古だが着るかい?」
「ん!ん!かんなちゃんも!」
「…………うん」
しとりの言うことには答えてくれる。
奈落の産み出した分身でありながらも神無も悪い妖怪ではなく、無の妖怪ゆえに善悪の感覚も無く無垢な心を持って生きているため、ただただ奈落の言葉に従っているだけ。しっかりと教えてあげれば神楽のように、自由を求めて生きていける。
「とても可愛いですよ、二人とも!」
「えへへ、ありがとー!」
巫女装束に着替えた私達は楓様の後ろを着いて歩き、摘んだ薬草を保管している小屋に入り、石臼や擂り鉢を使って薬草を煎じる。
少しお薬の臭いが混ざり合って臭い小屋に我慢できなかったのか。しとりは自分の鼻と口を押さえてドタバタと走り回り、ゴンッ…!と仰向けに倒れてしまった。
「んっ、くしゃい!!」
「はっはっはっ、素直な子だね」
「……臭いわ…」
「フフ、そうですね。神無さんも臭かったら大変でしょうから、しとりと一緒に口許を覆える手拭いを貸してあげます」
しとりと私とお揃いの糸巻きの絵柄を刺繍した手拭いを頭巾のように神無に着けてあげると、ゾワリとするような感覚が彼女の目の奥から感じる。
やはり、私達の事を奈落は見ていますね。
そうでなければ神無を犬夜叉達を追わせるはず。そうしないということは、きっと彼は左之助さんを利用しようと考えているに違いないです。