神無も加えた戦国時代の生活は順調ではあるものの。やはり明治時代に比べると不便な事も多く、旅の商人に私が着ていた着物の一つを金銭に換金してもらい、大釜を左之助さんに買ってきて貰った。
そう、お風呂である。
この日のために背の高い柵を作っているので安全にお風呂に入ることも出来ますし、しとりも行水ばかりでは嫌なのは分かっているけど。
「ありがとうございます。左之助さん、とても気持ちいいです」
「景、大丈夫か?」
「はい。底蓋もありますから」
身体に大きめの布を巻いてしとりと神無も一緒に、三人で釜茹での様に焚き火の上で温かな湯船に浸かっていると焚き火の具合を確かめてくれている左之助さんに話し掛けながら、タイムスリップしてから久しぶりに味わうお風呂の気持ち良さに、ほうっと息を吐いて肩まで湯船に浸かる。
「はふぅ…」
「フフ、しとりも気持ちいいのね。神無さんもお風呂は気持ちいい?」
私の問い掛けに少しだけ間を置いて、コクリと頷いてくれた神無の反応を喜ぶ。ここ数日の彼女の無の妖怪としてではなく一人の女の子としての変化は目まぐるしく、彼女との生活も楽しいと思える。
「熱かったら言ってくれよ」
「はい。ありがとうございます♪︎」
濡らした手拭いを頬に当て、汚れを洗い落としていく。ちょっとだけ臭いかもと不安に思っていたから、こうしてお風呂に入れるのはとても幸せです。
ふと視線を感じると神無が私の事を見つめているので、同じように顔の汚れを拭き取ってあげると何か言いたげな視線を私に向けてくる。
「フフ、どうかしましたか?」
「しとりもして!」
「あらあら、此方においで」
「……オレも行って、いや、四人も入れねえな」
ガックリと項垂れる左之助さんの姿にクスクスと笑いながら大釜の外に上半身を乗り出して、煤の着いた左之助さんの頬も手拭いで拭いて上げ、柵を敷物代わりにした場所に私を移して貰い、粉末状に加工したシャンプーと石鹸を取り出し、桶を椅子代わりにしたしとりの身体と頭を優しく洗ってあげる。
「ん!ぴかぴかなる!かんなちゃんもする!」
「…………うん……」
しとりの言葉に頷いた神無を左之助さんが抱き上げ、私の目の前に降ろしてくれ、しとりも同じように優しく身体と頭を洗ってあげる。
無の妖怪だろうと奈落の産み出した分身だろうと女の子なんですから綺麗にして良いんです。その権利すら奪うのは絶対にしてはいけないのです。
「ん!おゆかける!」
そう言ってしとりは桶に汲んだお湯を私達に掛けてくれ、全身を包んでいた泡を洗い落としてくれた。やはり、お風呂は良いものですね。