魚や野菜など買い物を終えた帰り道。
左之助さんの鍛練も兼ねて赤白の両方の味噌樽を買い、ダンベルのように担ぐ彼の隣を歩きつつ、みたらし団子を彼の口許に差し出す。
「たまには買い食いもありだな」
「たまになら、ですよ?」
「分かってるよ……って、ありゃ弥彦か?」
私の忠告に苦笑しながらお団子を頬張り、モグモグと噛み締めていた左之助さんが人混みの中にいた明神君を見つけたらしく、私も明神君を見るために身体を前に向けるけど。人混みが多く明神君は見えなかった。
「赤べこに入ってくな」
「(……明神君ひとりで赤べこ、あの話かな?)」
おそらく明神君を見ているであろう左之助さんの言葉に武田観柳もしくは高荷恵、四乃森蒼紫編の少し後に続く話の内容を思い出す。こういうとき、ずっと漫画を読み込んでいた前世の自分に感謝の気持ちを伝えたくなる。
偉いわよ、前世の自分!
そう自分の前世を褒めつつ、いそいそと何かを運び込んでいる明神君を漸く視界に入れると同時に神谷さんと緋村剣心も見つけてしまった。
元々はあの尾行する中に左之助さんもいた筈なんだけど。私の買い出しに付き合ってくれたから、少しだけ歴史がズレてしまっているようだ。
「覗いていきます?」
「いや、味噌樽があるから今日は止めとく」
「それもそうですね」
左之助さんの言葉に納得し、鮮度を保っているとはいえ生魚を入れた籠を持つ私はいそいそとごろつき長屋に向かう足を早める。
まあ、少し早めたところで左之助さんより背丈の低い私は彼の歩幅に合わせることは出来ないけれど。
こういうとき、左之助さんの身長が羨ましい。
「…はあ…」
「どうかしたか?」
「ちょっと左之助さんみたいに大きかったらなと自分の貧相な身体に悲しさを感じてるだけです。ねえ、左之助さんはどうやったら大きくなれると思いますか?」
「まだ若いんだからその内伸びるだろ」
「むう、本当にそうでしょうか?」
彼を疑っているわけじゃないけれど。左之助さんみたいに運動しているわけではないから、こうして彼に釣り合える自分になろうと頑張って……頑張ってるよね。うん、最近は運動も始めたから大丈夫なはず!
そう自分自身に言い聞かせつつ、もっとご飯を食べるべきだろうかと悩む。自堕落な生活は送っていないものの、仕事に費やす時間も多忙すぎるから左之助さんと暮らす前までは食事も余り取っていなかった。
「……そういや糸色って何歳なんだ?」
「慶応元年生まれの十五歳ですが」
「大して変わんねえな」
いきなり、どうしたのだろうか?
「てっきり年上だと思ってたぜ」
「えっ、老けて見えます?」
「大人びてる……いや、色気があるな」
なんだかものすごいショックなんですが。私って、そんなに老けて見えるような顔をしているのかな。そう自分の顔を触りつつ、不安な気持ちになる。