奈落の野望や思惑に惑わされる事は一応は無くなるそうですが、まだまだ私達は東京に帰ることは難しそうです。まあ、シンプルに船酔いする私のせいですが、お腹の子に負担を掛けるのは嫌なのだ。
その事は左之助さんにも伝えているため問題はないし。三馬鹿の子達に仕事のイロハを叩き込むには、ちょうど良い環境だと左之助さんは言っている。
「しとり?しとりー?」
「ん!ん!」
お昼のご飯を作り、しとりを呼ぶ。
すると、トタトタと可愛い足音を奏でてやって来たしとりはドンと親分、個魔の方を引き連れて居間の方まで来てくれた。けど、何か変なものを持っている。
昨日や一昨日は何も感じなかったけど。
何か変なものがしとりの手に埋まっている?
「ぱんけぇき!」
「あっ、そうよね。先に食べようか」
「ん!いたたぁきます!」
「フフ、噛んじゃったね」
子供用に作って貰ったフォークとナイフを使って、パンケーキを小さく切り分けるしとりの手捌きは拙いながらも丁寧で、しっかりと教えたことを覚えていてくれて、とても嬉しい気持ちになる。
だというのに、彼女の右手が気になってしまう。
今まで感じたことのないものだ。
戦国時代に行ったときに奈落に何かされた?と思考を巡らせていると頭に激痛が走り、深読みを続けるとまた制御して貰った「特典」が暴走しそうですね。
「ねえ、右手に何かもらったの?」
「んむっ、んとね……かんなちゃん!」
「……成る程、そういうことですか」
ゆっくりとナイフを握っているしとりの手を取り、彼女の小さな手の甲を見つめると見えた。やっぱり、手の中に有った。しとりは奈落に知らず知らずの内に四魂の欠片を埋め込まれていたんだ。
「しとり、身体に変な事はない?」
「ぱんちつよーい!」
「わあ、気付いちゃってたかあ……」
どうしよう、左之助さんが帰ってきたら伝えようかな。いや、そうなったら「彼」に向かって行きそうだし、こうなったら日暮神社に送って貰うしかないわね。
「あ、時代樹様もパンケーキ食べますか?」
そう問い掛けると居間の神棚を抜けて、時代樹の依り代のような精霊が居間に現れ、私は多めに作っていたパンケーキを三枚ほど別のお皿に移し、ナイフとフォークを彼女の目の前に置き、ティーポットから紅茶を注いだカップを用意して彼女に差し出す。
「ふむ、斯様な物を食べるのははじめッ…!」
やっぱり私の味付けは他のパンケーキと違っているのか。一口目を食べる人は両目を見開いたり、困惑した様な表情を浮かべることが多いのです。
美味しいから、良いですけど。